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V-Lowマルチメディア放送とAMのFM化

昨日、総務省から「 V-Low マルチメディア放送及び放送ネットワークの強靭化に係る周波数の割当て・制度整備に関する基本的方針」が発表された。
V-Low帯の利用方針は、この間二転三転したが、ほぼ想定の範囲内の落とし所でオーソライズされそうである。
今回の方針を簡単にまとめるとほぼ次のようになるだろうか。


VHF帯の1~3CH、すなわち90~108MHzを3分割。
90~95MHzは、AMのFM化に利用(当面、中継局扱いのようだが)。余裕があればコミュニティFMにも割り当て。
95~99MHzはガードバンド的な予備帯として置いておく。ただし、マルチメディア放送用として使うこともありうる。
99~108MHzは各ブロックのマルチメディア放送用、9MHzを2分割し、隣接するブロックと混信しないよう全国に配置する。この場合、各ブロック4.5MHz、9セグメントが利用できることになる。
C詳しくはITProの記事も参照してほしい。)


さて、今回の裁定、大岡裁きに匹敵するようなものになっているのだろうか。
日本の役所に任せておくと、こうならざるを得ない結果というのが私の印象だ。
とにかく放送業界の2つの勢力、AM局とFM局のどちらの顔も立てるとなると、そうせざるをえない、でも本当にこんな電波割当は正しいのか、そう慨嘆している人も多そうだ。
電波の有効利用という考え方が、どうしても二の次になった、それよりも既に走りはじめている両勢力の動きにどう電波をあてはめるかが優先されてしまったと言える。
放送人は、大体こうなるだろうとわかっていた、だから、そのあたりの駆引きをこの間続けながら、とにかく利権だけは確保できそうだ、ま、仕方ないだろうという精神状態にあるのではないだろうか。


とはいえ、これは単なるスタートにすぎない。
電波割当が決まりそうだとはいえ、それをどう使うか、そこに絶対的なビジネスモデルがあるわけではない。
AMをFM化したところで、新しい需要が生まれるわけではない。
具体的なユーザーのニーズについては、誰もグランドデザインを描けていない、多分こうだろうとツギハギ作業を続けているだけである。
新しく、参入しようとしている企業もあるが、多分疑心暗鬼な面を今も捨てきれていないはず。
「でさ、実際にそうしたら、どんな得があるの、我々に。」
それへの具体的な答、ありますか?
大丈夫です、やれば何とかなります、そんな放送局側の気分だけ伝わってくるようだが。


言い換えると、こうなる。
大丈夫です、皆さんに使い方を教えますから、その答えを皆さん方が持ってきてください。
皆で考えれば、マルチメディア放送は絶対に成功します。
お金もそんなにはかかりません、プランを考えるのは皆さんです。
私たちは、蓄積された放送のノーハウで皆さんを手伝います。
電波の利用価値は無限大です。
ぜひ、マルチメディア放送の世界にご参加ください。


放送のハードとソフトは用意してあるから、コンテンツを持ってこい、使用料をそえて。
そんなビジネスモデルに見えかねない、でもそれじゃ続かないだろう。
サービスを始めれば、はじけるように利益がほとばしる、そんな絵を描けるのだろうか。
多分、マルチメディア放送を使って、新しいビジネスモデルを開発する優秀な人たちがどここからやってきる可能性はなくはない。
しかし、今の放送業界の中から、そんな人が出てくるとはとても思えない。
モバホの失敗、CS-PCM放送の失敗、BSラジオの失敗、ついでにセントギガの失敗。
そして、V-highを使った「NOTTV」の停滞。
失敗から、何を放送業界は教訓化しただろうか。
ラジオそのものは、今や下方スパイラルから抜け出せない。
目先を変えるだけでは、ニーズの波は生まれない。
何かあるはずでは未来は開けない。

本当、何かあると思っているのだろうか、業界の皆さんは。



近況その他

いつのまにか7月の半ば、そして猛暑。
そろそろ何か書かないとと思って、材料を集めがてら、湊町の古巣の放送局へ。
歓迎されているのかどうかわからないが、何人かと世間話。
半蔵門に握られてしまった人事権のこと、伸びない業績、マンパワー不足。
でも、よくやっている部署もあるし、決して暗い未来ばかりではないと語る連中も。
一度に色んなことを聞かされて、消化不良気味の私。
もう少し整理しなおしてて、後日このブログで取り上げるつもり。
しかし、毎日本当に暑いなあ。


最近、気になっていること。
先日発表されたNOTTVの決算、何と215億の赤字だと。
NOTTVを運営する株式会社mmbiの第7期決算公告、私はこちらのブログで見ることができた。
色々感じることがあったのだが、まず今期が7期目だったこと。
そうか、2006年に既に会社をスタートさせていたのか。
当初は、「株式会社フジテレビジョン・伊藤忠商事株式会社・株式会社エヌティティドコモ・株式会社スカイパーフェクトコミュニケーションズ・株式会社ニッポン放送」の参画で発足。
その後、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、電通などが加わって行ったようだ。


最初の報道資料にはこうある。

日本におけるデジタル放送の発展のため、日本が開発した地上デジタル放送方式であるISDB-T方式を用いた新しいマルチメディア・サービスを研究し、地上アナログテレビ放送終了後の帯域において、同方式を用いたモバイル・マルチメディア放送に当該帯域が割り当てられるよう、その有用性をプロモーションすることを目的  (中略) 本帯域を有効に活用し、コンテンツ提供の多様化をはかり、国民の情報生活の向上に貢献する新しいマルチメディア・サービスの創生をめざす

そして、昨年4月スタートしたのがNOTTV。
初年度目標は100万契約達成だったが、結局6月までかかってしまったようだ。
今は120万を越えたぐらいとか。
ペイラインは500万契約、うわあ、まだ長いなあ。


NOTTVはNTTdocomoと一蓮托生、立派なNTTグループの一員。
NTTグループって、社員だけで10万人近くいるんじゃなかろうか。
それに家族がいて、関連企業があって、下請け業者がいて、一体、関係者ってどれぐらいいるんだろう。
それでいけば、100万人なんて簡単なはず。
後は、スマートフォンへの買い換えを促進させれば楽勝ではないか。
などと、多分docomo関係者は思ったのだろうなあ。
でもね、いくら関係者でも、日頃お世話になっていても要らないものは要らないんだよな。


多分、取引業者は大変だと思うよ。
月に420円、年間で5000円あまり。
それを100台分は契約させられる。
年間50万円ぐらい、当たり前だろう、なんて言われているのかな。
でも、ひかり回線だの、プロバイダ契約だの、日頃世話になっているのだから当然と言われて入らされているサービスは数知れず。
それに又こんなノルマまで。
もう、無理・・・・。


そういうわけで、NOTTV、笛吹けど踊らずで、低迷中というわけかなあ。
決算書で見ると、資本金あと170億しか残っていない。
次年度も215億の赤字を出せば、完全債務超過。
ま、今年は100万人を越えたのだから、50億は最低でも売上があるので、ギリギリセーフかもしれないが。
さて、どうなる?NOTTV。


個人的な意見ですが、今の番組内容、少し考え直した方がいいと思う。
もっと何と言うんか、とがったもの、サブカルチャー的なものをラインアップさせるとか。
ケータイの客をごっそりいただこう、みたいな従来のテレビ的手法だと、今あるものとバッティングして広がりが作れないのではないか。
何が何でも加入したいと思えるものでないと、ライバルには勝てないでしょう。


NTT関係者、頭のいい人もいるのだから、多分これから何らかのてこ入れをして、契約を増やしてだろうけど、頭の固いオッサンも多い業界だから、まだまだ時間かかるだろうな。
これがソフトバンクなら、とっくに500万超えているのではないだろうか。
もっとも、こんなビジネスに手を出すのは損だと、孫さんなら判断されるかもね。




ラジオにまつわるエトセトラ(2)

「他人が彼に対して何かを期待し要求してくれた。
それに応えることで、彼の人生はそれなりに忙しく回っていた。
しかし、その要求や期待がいったん消えてしまうと、あとには語るに足るものは名も残らなかった。」
(村上春樹「1Q84」第2巻)

要求や期待が消える、男の世界に顕著なことかもしれない。
いや、大きな要求や期待が私にかけられているのだと思えばこそ、男は必死になって働いたのかもしれない。
それを社会が肩書で答えたり、名誉的地位で答えたり、金という抽象で答えたのだろう。


課長になること、部長になること、そしていつかは社長になって、自分の名誉欲を思い切り充足させたい。
そんなサラリーマン、見あきるほど見てきた。
放送局も同じ。
出世しないと、自分のやりたいことはできないと思い、とにかく一歩一歩、自分をごまかしながら階段を上る。
そして、ある日、頂上が見えた時、ふと思う、自分は一体何をしてきたのか?と。
年をとり、人生の中で最高に輝いていた時をずっと記憶の中に大事にするしか、自分を確認することができない。
ある意味、多くの人は敗残兵だ。
でも、自発的に兵になったわけではない人は、年をとっても自然に生きている。
兵であった時は、それほど輝いてはいなかった。
だから、今も輝いていなくとも、それを恨むこともないだろう。


期待されている、何かを要求されている、年をとれば、その実感は漸減する。
老いてなお、他者からの期待も要求も変わらない人は、ある意味幸せ。
金がなくとも、社会的な評価がそれほど高くなくとも、コンスタントに他者とつきあえた人は泰然と老いを迎えることができるような気がする。
語るに足るものが残らなくとも、ケセラセラ・・・。


さて、前回を受ける形で、思うことを書いてみた。
最近、期待されても要求されても、あまり対応したくなくなった、それが今の実感。
このままフェイドアウトしたいとも思わぬが、いいように便利扱いされるのはご免だ。


今の私に、ラジオ業界から期待されたり要求されたりしていることがあるかというと、さてどうだろう。
一部の人たちは、次に何をするかを興味を持って見られているようだ。
何かの参考にしたい、できれば手伝ってほしい、そう思っている人もいないではない。
だが、大部分の関係者にとっては、もはや終わった人、いや早く終わってほしい人と思われている気がする。
何しろ、この10年ぐらいに業界に入ってきた人には、私は関係のない世界の人だ。
言っていることも、何言っているのか、よくわからないようでもある。
そして、そのラジオ業界の空気の中に、もはや正のエネルギーは醸成されていない。
元気だったラジオを知らぬ世代が、ラジオの現場を管理している。
ただ繰り返すだけ。
金になりそうなことを、ただ電波にはりつけるだけ。
そんな手抜きの商品に、一流クライアントが魅力を感じるわけはない。


FMCOCOLO、45歳以上をターゲット、曲はその世代が喜んで受け入れられるものを中心にオンエア。
安心して聞ける、45歳以上のリスナーは。
でも、それで商売になるのだろうか、どういうマーケティングをしているのか教えてほしい。
45歳以上が望んでいる情報は、過去の音楽そのものではない。
今、自分に必要な情報だ、健康とか、経済とか、人間関係とか、老後の問題とか。
COCOLOは何一つ応えていない。
ただ、45歳以上が聞いて邪魔にならない曲をかけるだけ。
BGに使えます、聴取率も上がっています。
でも、メッセージがない、802が開局の時どれだけ若者にエネルギーを与えたか。
何か、これが俺たちのメディアだ、何てエキサイティングなんだと思わせたはずだ。
それはFM大阪でも70年代に起きたことだ。
何も802が群を抜いて際立っていたのはではない。
その時代が、そのメディアに上昇気流を与えたのだ。
人間が頭の中でこねくりまわして得たもの等、さほど重要なものではなかった、そうは思わないだろうか。


だから、COCOLOに必要なものは、少し上がった聴取率ではない。
そのメディアがどうやれば今の空気の中のかすかな上昇気流を関知し、その風に合わせた番組を開発し、そしてその風を待つ忍耐力を持つかだろう。
こうすれば、数字が上がる、売上が上がると頭の中をぐるぐる回る議論を続けている間は、事態は変わらない、ユーザーに刺さってもいかない。
作り手側がどれだけ風を読めるのか。
その勘を持たない現場が、過去の番組をリピートしている、そうならないように経営サイドがどういう決断をするか、畢竟そのあたりに問題があるような気がしてならない。