カテゴリー : メディア論

V-Lowマルチメディア放送をポジティブに考えてみた~プロファイリング

私はこのブログでマルチメディア放送を始めとする、デジタルラジオ関連の話題を相当数書いてきたわけだが、別のブログ「フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編」でも、何度となくこの問題を取り上げさせてもらってきた。
で、今回はそのブログの中から、2007-01-30に書いた「デジラジ再び」という内容を引用し、少しV-Lowマルチメディア放送をポジティブにとらえてみることにした。
大丈夫か?V-Lowみたいな話ばかりだと思われないよう、今回は頑張れ!V-Lowみたいな話にチャレンジしてみることにする。
少し長い引用になるが、ご了承願いたい。

放送の業界誌「放送界」(マスコミ研究会発行)新年特集号に「新春鼎談・新産業としての3セグデジタルラジオ」という特集がありました。
TFMの後藤会長とニュービジネスフォーラムのキーパーソン、杉山・宝珠山両氏による3セグデジタルラジオの可能性をさぐった鼎談です。
デジラジにどんなビジネスモデルを描かれるのか、楽しみにして読んだのですが、一般論というか理想論ばかりで、あまり参考になりませんでした。
その中で、唯一後藤会長がこういうことを言っておられました。

「デジタルをきっかけに新しいプロファイリングをいかに売りにむすびつけるかを考えないと。」

イギリスのデジタルラジオが、マーケティングデータを駆使して、この放送を聞いている人はこういう生活をしている、こういう車に乗っているというプロファイリングを商売に結び付けているのに驚いたという体験も語られていました。
ラジオはますますパーソナルメディアになり、あのラジオを聞く人はこういう属性を持った人だということが明確になる、それが商売に結びつくと考えておられるのかもしれません。

ラジオがどこまでプロファイリングを前提としたパーソナルメディアになるかが勝負ということもできるでしょう。
デイリーレポートが出せないラジオが、よりテンポラリーなユーザー属性を提示できるようになれば、インターネットにシフトしつつある広告費を再び呼び戻すことができるようになるのではないか。
聞かれないラジオは淘汰され、より聞かれるラジオに変わっていく、当たり前といえば当たり前の競争社会の原理がやっとラジオ業界にも適用されてくるのではと思います。



デジタルラジオ(マルチメディア放送?)のキーはプロファイリングではないかと、当時のTFM後藤会長は提起されておられた。
今のラジオにないのは、プロファイリング。
その時間を聞いている人の実態が瞬時にわかる、そんな放送が次代のラジオのビジネスモデルの中核になるかもしれないというのだろう。
無料の商業放送に今後不可欠なのは、リスナーの実態が手に取るようにわかることだ。
誰がどう聞いているかも不明、ただ大雑把な、どの世代がどれだけの割合で聞かれているかしか提示できないラジオでは、広告メディアとしては自ずから限界があるのは事実だろう。


ご存知のように、インターネットは実数として反応がカウントされ、ユーザーのプロファイリングを重視したアクセス解析も容易であることは事実だ。
またテレビも個人視聴率も充実してきており、広告ターゲットの層が実際にどれぐらい広告を見たのかもリアルにカウントできる方向へ進んでいる。
それに比べてラジオは旧態依然たるまま。
聴取率調査のやり方、多分この50年近く根本的な部分は変わっていないのではないだろうか。
相変わらず日記式だし、実施回数は年に数えるほどだし。(首都圏は何とか6回実施するようになったが。)
いまだにドンブリ勘定で商売をし、聴取率調査に現れた数字もほとんど非公開。
これからラジオ広告を打とうかなと思っても、具体的な数字は発表されていないから、クライアントはどうしていいかわからない。
(それゆえ、広告代理店が必要なのだろうが、その前にインターネットで大体の聴取率ぐらい、調べればわかるようにすべきではないだろうかと私はよく思うのだ。)


ラジオがこれから生き延びるには、今やっていないことをやること。
その一つが、聴取率調査の具体的な数字を発表すること。
それで、例えばラジオの広告効果とか、どういう番組がどういう層に受け入れられるのかなどを、研究対象として大学や市井の研究家の間で議論がなされたり、提言がなされたりするようになることが重要だ。
広告価値とは、語り合われる価値でもあると思う。
話題になることが活性化を生む、今ラジオ業界はそういう努力をどれだけしているのだろう。


ということで、V-Lowマルチメディア放送で重要視することは、プロファイリングではないかと思うのだ。
今、色んなことが試験放送として実施されているが、あまりプロファイリングを前面に出して語られるコンテンツは少ないように思われる。
こんな放送をすれば、こんな属性をもった人がユーザーとなる。
だから、こういう風に広告を展開すればいい、という提言だ。
O2O(オンラインtoオフライン)という概念を強調しても、それはすでにインターネットの世界でクーポン配布と言う形で一般化されている。
今さら、マルチメディア放送の方がインターネットよりも一斉に大量に送られるから効率的だと言われても、ユーザーとしては半信半疑ではあるまいか。
よしんば、それが事実であったとしても、インターネットで十分だとユーザーに思われてしまっては終わりである。


とにかく、私は今までラジオ業界が本当はやりたくなかったことをやるしか、今の時代には通用しないのではないかと思うのだ。
隠してきた実態を見せること、本当の広告効果を見せること、それなくしてラジオにクライアントの意識が本当に向くのだろうか。
何故に今のラジオがラジオショッピングに依存しているのか、レスポンス広告に依存しているのか、それらがプロファイリングというキーワードを通して明らかになってくると考える。
それから、いつまでも目をそむけていては、これ以上の発展はない。


などと、述べてみたのだが、どこまで通用するのだろうか、この議論は。




V-Lowマルチメディア放送の本気度~夢はどこにある?

さて、またしばらくご無沙汰してしまった。
この間、色んな人と会ったり、V-Lowマルチメディア放送用の端末なるもの(スマートフォン他)を見せてもらったり、具体的なシステムを発注された方からレクチャー受けたりしていた。
で、V-Lowマルチメディア放送は成功するかと聞かれたら、正直、ウ~、わからん!である。


総務省は、まあ本気なんだろう。
ちょうどいいところに、復興予算というか、国土強靭か予算というのが組まれて、それに当てはまるようにプランを修正して、何とか国の政策へと格上げできたようだし。
また、TFM-電通の関係からか、経産省もスキームに絡んできたようだし(radikoと同じ構造?)、そこにNTTドコモも加わって、なかなかの陣容が整ってきたように見える。
安心安全端末(wi-fiルータみたいなもの)とやらも、聞けば100万台作って無料配布するらしいし、自動車のカーナビのオプションにも加えられるらしいし、福岡では来年夏には本格的サービスがはじまるらしいし。


何か、先ほどから、ようだとか、らしいとしか書いていないのが自分でも気になるが、まあ何とかFM東京が構想していた形ができてきたのは確かなのだろう。
各地のマルチメディア放送会社はOK、電波の割り当てはOK、資本参加する大企業もほぼ確保、サービスを提供したいという会社も思惑通り。
技術的にも大丈夫、端末も少し危なっかしいが、最低限は用意できるはず。
送信アンテナの問題も、まだまだ紆余曲折はあるだろうが、基本的な部分はOKという声も聞く。
ただし、メーカーがどこまで本気で受信端末を売り出すかは何とも言えないが。
残念なのは、iPhoneにチューナーを搭載するのは難しいということ、日本だけに特別にという発想はないよなあ、アップルは。
それで、Wi-Fiチューナー型受信機を作り、無線LANなどのアクセスポイントにも使ってもらえるようにし、アプリを使って利用してもらえるようにするらしい。
とにかく、電波を使った放送は、端末命だ。
それが、どういう風に用意され、どれぐらい普及するのか、従来のPCM放送、モバホ!の失敗にどれだけ学んでいるかが問われることになりそうだ。
(NOTTVも、結局それを受ける端末が限定されることで躓いているというのも事実だろうし。)


さて、何かいまいちよく把握できないまま、V-Lowマルチメディア放送がスタートするような気配だが、ITを中心とする業界人にはあまり好意的には思われていないようだ。
あのi-modeを開発したといわれる夏野剛さんは、11/15のツイッターで次のように語っている。

ネット放送が当たり前の時代に時代錯誤する官僚と業… V-Lowマルチメディア放送が切り開く、全く新しい放送サービスとライフスタイルイノベーション(前編)(通信・放送融合型新サービス・ウォッチング)

下手をすると時代錯誤ですよ、官僚の皆さん、放送業界の皆さんと警告しているのかもしれない。
確かに、取り上げられているサービスは、ほとんどインターネットで代替可能なものが多い。
ユーザーが一斉に同じサービスを受けられる、車で受信可能という側面は評価すべきだろうが、さて、それだけでユーザーのニーズは生まれるだろうか。
それぐらいなら、要らない、今のネットで十分とユーザーに言われたら終わりである。
ワンアンドオンリーなメディアとして認識されるには、何があるか。
「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない」という問題をどう解消するか。
何かのオルタナティブとして重要、絶対に必要という認識が生まれれば(例えば災害発生時や防災のためのメディアとして)浮かぶ瀬もあるだろうが、さて、何かアピールするものがあるのだろうか。


もう一つ、別のマルチメディア放送に関する記事を紹介しておく。
ダイヤモンド・オンライン11/7の~アナログTV放送の“空き地”を活用する「マルチメディア放送」は何処を目指すのか~ がそれだ。
通信・放送セクターのコンサルタントというクロサカタツヤ氏の論考である。
全文を読むには登録しないといけないので、一応ご了解いただきたいが、その中で、クロサカ氏はこう書く。

たとえば、マルチメディア放送は「ビジネス」を前提として事業モデルやエコシステムの構築を行っていることに、そもそも矛盾や限界があるように思える。市場性の観点からすれば、すでにモバイルブロードバンドとスマートフォンにかなうはずもないし、また特殊なチューナーが必要なシステムが競争力を持つとも思えない。
 むしろはっきりと、公共目的であることを打ち出して、地域ごとのローカルメディアの構築・運営を促進するプラットフォームとして位置づけた方が、いいのではないか。

で、結論はこれである。

現状のように先が見えない状況においては、闇雲に事業化を進めるよりも、マルチメディア放送のあり方について、単に事業化を前提としない、より多様な検討こそが、地域社会の発展につながるはずだ。
 あるいはそうした議論が行えないのだとしたら、むしろ最初へ立ち返ってV-LowとV-Highという周波数の使い方も含めて、議論をやりなおすべきだろう。電波という国民全体の資源が枯渇する中、その活用というならば、そうした厳しさを持って、あたるべきではないか。

お説ごもっともである。
事業的に成功できるかどうかわからないまま突っ込んでいく方式は、今までさんざん失敗してきたことではないかという指摘は私も同意見だ。
とにかく、このV-Lowマルチメディア放送プロジェクトに参画している皆さんは、どこまで本気なんだろうと心から思う。
事業として成功するかどうか以前に、このサービス、本当にユーザーがほしがっているの?金を出してまで、そのサービスを買ってくれるのかという視点からも考えたほうがいいと思うのだ。
商業放送は、今までスポンサーありき、代理店ありきでビジネスを考えてきた。
だから、ユーザーのニーズまでは深く考えてこなかった、とにかくスポンサーがつけば、代理店が何とかしてくれれば、そのサービスは何とかなったのだ、それが放送というビジネスなのだった。
でも、そのスキームは、ここで本当に使えるのか?
一体、それに変わるビジネスモデルを放送業界の人間は持っているのか、日々着々と建築物は立っていくが、その中に入るのは何?それを利用する人は誰?
この道は、いつか来た道~♪




NOTTV~V-high放送のエトセトラ

V-Lowマルチメディア放送って、本当に普及するのだろうかと問題提起をした私だが、今回はそのための参考になるかもしれないV-highを使った携帯向け放送、NOTTVに少し触れてみたい。


初めてこの欄でNOTTVを紹介したのは、2012-4-12の「モバキャス NOTTVに一言」だった。
そこで私が下した結論は、NOTTVは古いイメージしか与えない、イノベーションは感じられないし、そこからの発展性も見えてこないということだった。
2012-6-15の「radiko ~破壊的イノベーション」では、橘川幸夫さんのコラムを紹介し、このままではNOTTVは行き詰るのではないかという危惧を書いた。
橘川氏の言葉をもう一度再掲する。

しかし、AKB48とプロ野球を番組編成の中心に置いてしまうような旧式テレビ業界の発想は、いくら資金を投入しても解決できる問題ではない。根本的なところで「テレビとは何か」「インターネットとは何か」「インターネット時代のテレビとは何か」という問いかけからスタートしない限り、旧来のメディアの二番煎じか、予備軍にしかならない。

つまり、ここには新しいメディアと呼べるものは何も提示されていないということだ。
技術的には新しいサービスを開発したのだろうが、中味が伴わなければニーズは生まれないのは自明のはずだ。
それを何故か業界人は自覚しない。
同じ失敗を繰り返し、それでも同じ方法論に突き進む。
前回書いた「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない。」をもう一度、心に植え付けてほしいものだ。


さて、NOTTVについて、そうは書いてきたものの、実際私はこのNOTTVのサービスをほとんど経験していない。
というか、今のところNTTドコモのスマートフォンしか受信できないので、ユーザーではない私はコンテンツを評価する立場にはいない。
私の周りにも、契約している人がいないので、今も具体的に動画をみたりすることはない。
そういうことで、中味云々の話は無責任になるので、これぐらいでやめる。
その代わり、今のNOTTVの状況を資料とともに紹介しておこう。


まず、今の経営状況である。
こちらのサイトに今年3月期の決算報告が載っている。
結果は216億の赤字である。
サイトでは、「売上高:11.44億円、営業損失216.41億円、当期純損失215.89億円となった。2013年6月に契約者数が100万人を突破したが、月420円の会費を払っているのは、約23万人と想定される。」とあるが、会費支払い者23万人は間違い。
契約者は漸増していくわけだから、1年間で平均すれば23万にかもしれないが、3月段階ではもっと多くなっているはず。ま、それは余計なお世話かもしれないが。


しかし、赤字216億は凄い数字だ。
減価償却分もこれからずっと続いて行くわけだから、資本金(準備金含む)500億あっても、あと2年以内に単年度黒字化させないと当然ながら債務超過に陥りかねない。
黒字化させるには、500万人の契約者が必要だと喧伝されていた。
では、その契約者、今は何万人なのだろうか。


それは、NOTTVのサイトにお知らせとして発表されている。
まとめてみると次のようになる。

2013年5月  998,925人
   6月 1,221,344人
   7月 1,351,945人
   8月 1,489,263人
   9月 1,476,716人
   10月 1,480,301人

確かに、6月に100万人を超え、これからどんどん増えて行くのかと予感させたが、結局150万人を超えないまま頭打ち状態だ。
その原因は何かというと、皆さんも何とかなくお分かりだと思うが、今年の9月から他社への対抗のため、iPhoneを販売しはじめたからだ。
iPhoneには、NOTTVのサービスがないのである。
ドコモはiPhoneを売れば売るほど、NOTTVの契約者は増えない、下手をするとアンドロイド系スマートフォンから引越してくるドコモユーザーが出てきて、ますます停滞することになりかねないのだ。
もはやドコモはアンビバレンツな状況、NOTTVの契約者を増やしたいと思っても、iPhoneの販売に力を入れないといけないので、どうしようもないのである。


同業他社が、NOTTVのサービスを自分のスマートフォンに入れてくれることは期待できない。
トップ企業としてのプライドがあるから、auやソフトバンクに頭を下げにいくこともないだろうし。
さて、NOTTVの運命や如何になのだが、このままV-highが衰退することになると、いくらブロック別のV-Lowマルチメディア放送でも、影響を受けないわけにはいかないだろう。
どうするV-high、大丈夫かV-Low。
国土強靭化の予算は確保したようだが、「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない。」状態では、なかなか未来は開けまい。
ということで、少し寄り道をしてV-highの話を書いた。
次回は、またV-Lowの話に戻ってくる予定。


<PS>
来年3月末の売上予想は平均契約者120万人と考えて、60億程度。今年より50億程度増えるが、赤字額は150億前後になる計算になる。
制作費のカットぐらいでは、もちろん済まない額である。