カテゴリー : 2012年 1月7日

FM局の盛衰

2012年の展望、今日はお休みして、FM放送局の盛衰について今日は少し触れてみたい。
「FM雑誌と僕らの80年代–『FMステーション』青春記」(河出書房新社刊)を読了した。
栄光をきわめたFM雑誌、FMステーションの編集長だった恩蔵茂氏が書いた本だ。
もっとも人気があったころは、発行部数50万部だったという。
他の3誌、FMfan、週刊FM、FMレコパルも、少なくとも30万部ぐらいは発行されていたはずだから、何と150万部近くのFM雑誌が読まれていたことになる。
これはすごいことだ。
日本の人口の1%強がFM雑誌を買っていたのだ。
目的は、当時を知っているものなら容易に見当がつく。
FM放送をエアチェックするためである。
エアチェック、最近は死語同然の扱いを受けていて、若い人に聞いても「空気をチェックするんですか?」と答えてくる。
時節柄、放射能の問題があるから、そういう反応が返ってくるのも仕方がない。
参考程度に意味を書くと、「主にFM放送の番組をカセットなどに録音して楽しむこと。レコードと同じようにライブラリーにして保存したりしていた」というところか。
とにかく、自分の聴きたい曲、残したい曲がFM番組を受信するだけで手に入れることができた。
何もない部屋が、日々のエアチェックの結果、音楽の倉庫になるという感覚、今の人にはピンと来ないかもしれない。
エアチェックが若い人たちの生活の一部になれば、当然それに付随する商品が売れる。
ラジカセ、カセット、クラシックファンには高価なオーディオセットなどもバブルの波に乗ってバンバン買われていった。
FM雑誌はそういう購買層を150万人も持っていたと言っていい。
当然、広告はオーディオ関係で一杯になる。
また、新規参入企業も増え、広告ページは3カ月分先まで満口になったと恩蔵茂氏は語っている。
FM局、FM雑誌 オーディオ関係等のクライアント、その見事なビジネス・トライアングルは、上層スパイラルを描いて盛況をきわめたのである。
もちろん、音楽業界も当然その連関の中に加わる。
エアチェックされても、レコードの売り上げはどんどん伸びたからだ。
FM局は今までのAM局が紹介しなかったジャンルの音楽を湯水のように流してくれた。
新しい需要が生まれ、埋もれていた音源も又日の目を見た。
我が世の春、FMワールドが見事に花開いたのである。


なのに、いつのまにかそんな見事なトライアングルは消えた。
文字通り、「チーズはどこへ行った?」という感じだ。
FM誌からすれば、FMが単純でなくなったからという指摘がされるだろう。
FM局が東京・名古屋・大阪・福岡の4局とNHKFMだけの時が一番シンプルで安定していたのだ。
その後、全国にFM局ができていき、大都市にJ-WAVEやFM802などの第ニFM局が生まれ、それまでのシンプルなエアチェックスタイルを壊していったからなのかもしれない。
J-WAVEからすれば、それまでのFM東京などの既設局に勝つには、従来のトライアングルに乗っかっていては限界がある。
だから、とにかく今までの業界のやり方は踏襲しない。
新しいラジオ、スマートなラジオを目指し、モアミュージック、レストークを推し進めたわけだ。
しかも、生放送を重視し、事前に曲目なんか発表しない。
また曲はDJに合わせて、トークをのっけ、またフェイドアウト、フェイドインなどを駆使する。
リスナーがエアチェックしようとしても、うまく録音できず、結局若者からそういう習慣を奪っていく。
つまり、FM雑誌が衰退したのは、FM局がエアチェックをする媒体ではなくなったからということになるのだ。
音源を録音し、自分の部屋にストックするという習慣がなくなれば、当然オーディオメーカーはFMから離れる。
一番のお得意さんをFM局はどんどん失っていったのである、意識するかしないかに関わらず。


それを補っていたのは、CDが普及し、ミリオンヒットが連続して出るようになった音楽業界だった。
一番売れるのは、J-POP。
ほとんどのFM局はJ-POP中心の編成になり、レコード会社はCDの販売促進費をどんどんFM局につぎ込んでいった。
ヘビーローテーションもお金に変わっていった。
FM局でかかる(皿がまわる)ことが、人気のバロメーターになり、FM局にはレコード会社のプロモーターや有力音楽事務所のマネージャーが日参したりしていた。
確かに、これではFM雑誌の出る幕はない。
普通の音楽雑誌と大して変わらなくなり、出版社は次々と雑誌を休刊させていった。
(そりゃ、オーディオ関係のクライアントがFMから離れていけば、FM雑誌を発行するインセンティブなんか働くわけはないよね。)


ということで、バブルに浮かれたFM局は従来のエアチェック路線を放棄し、レコード会社などの音楽業界とのつながりを強めていったわけだ。
そして、今度はパソコンの時代になり、ネットの時代になり、CDの売上は激減。
オーディオ業界が果たした役割を引き継いだレコード会社は、冷徹な現実を受けてFMへ金をつぎこむことをやめる。
そして、FM局はかつての栄光を失い、今、どうやってこれから生きていくかを模索しているということなのだ。


おしまい。


さて、勢いにまかせて、FM雑誌とFM局について書きなぐってみた。
他にも色々思いついたことがあるが、長くなりそうなので又の機会に。