カテゴリー : 2012年 1月

FM局盛衰記

さて、少し具体的な例を出しながら、今後の放送業界、ラジオ業界について考えを述べて行きたい。
そうなると、まず私が在籍していた古巣のFM局のことに触れないわけにはいかない。
今、私の目の前には、その局の最新タイムテーブルがある。
私が居た時のそれと比べて一番顕著なことは、スポンサーの表記が圧倒的に少ないことである。
キラ星のように、有名クライアントが並んでいた時代、その時はFM放送は時代の寵児であったなあと思う。
今は、ただのラジオの一つ。
かつてFM東京さんが、「FMをラジオと呼ぶな」と主張されていたことを思い出す。
ラジオという言葉はAMを指すものだ、我々はFM、新しいメディアである。
差別化するために、ラジオとは呼ばせない、ローカル局もそのつもりで、というニュアンスだった。


FM大阪発のネット番組に「れでぃお・アンルイス」(シャープ提供)というのがあった。
東京さんは、このタイトルにクレームを入れてこられた。
ラジオという表記はやめてくれ。
それに対してのFM大阪の返事は、「ラジオじゃない、れでぃおです。」だったとか。
本当かどうか、今となってはわからないが、色々ごたごたしていたと聞く。
ちなみに、私はこの番組の三代目ディレクターだったが、代わってから1年ほどで終了してしまった。
で、その後番組が前にお話した「山本コータローのアイドルランド」。
アイドルという言葉にも、FM東京は拒否反応を見せたらしいが、真偽のほどは不明ということにしておこう。


FM局、これも前にFM雑誌のところで書いたことだが、最初はオーディオ関係のスポンサーがメイン。
トリオだのアカイだのサンスイだのデンオンだのアイワだのオンキョーだの。
それに家電メーカーがわざわざオーディオだけのブランドを作り、松下はテクニクス、東芝はオーレックス、三菱はダイアトーン、三洋はオットー、シャープはオプトニカ、日立はローディ、ソニーは・・・やっぱりソニーだったかな。(日本ビクターはどうだったっけ。)
これらが番組持ったり、全時報のスポットを提供したり、1日ニュースを提供したりしていた。
これに大阪だと日本橋の電器店がスポットの提供に加わる。
今でも残っている上新電機のほか、ニノミヤムセン、中川ムセン、喜多商店、昭和ケース音響、岡本無線、共電社、シマ無線なども提供いただいていたと記憶する。(記憶もれがあればご容赦ください。)


基本的に、番組はエアチェック優先のフォーマット。
本当に若い層、それもお小遣いを持っているヤング、ヤングアダルト層ねらいのクライアントが多かった。
もう、そういうイメージというか、若者ブランドとして確立していたのがFM放送という感じだった。
ところが、10年も経つと、オーディオ中心では売上が伸びない、もっと女性の層を取り込まないと今年度の予算は達成しないという話になり、少しファッショントークみたいなものが増え始める。
ワイド番組を切り刻み、ファッション中心のベルト番組、デザイナーのトーク番組などが始まる。
コーセー化粧品、資生堂、カネボウ。
外資系のクリニークがFM中心に長秒スポットを打ち出したのもこの頃。
大阪だけでも、年間2千万程度のスポットを流したのではなかったか。
その頃からファッション系のクライアントも増え、大阪ではスリーエム、コバック、東京スタイル、イトキン、ミカレディ等々がクライアントに名乗りを上げ始めた。


10年目以後に打ち出したキーワードが「ニューファミリー」。
つまり、学生だったオーディオファンの若者が、結婚し、子供が産まれ、ファミリーを形成。
それも今までと違って、核家族的に独立したファミリー。
そのニーズに合わせた商品が生まれ、そのPRにFMメディアが選ばれたのだろう。
80年ぐらいから加速度的に増えていったのは、SC(ショッピングセンター)。
百貨店やスーパーの時代から、おしゃれなSCの時代へと変わって行った。
その時にもFM放送は、SC展開の核にいた。
ほぼ私の営業時代で、私が担当したクライアントだけでもエスト一番街、心斎橋パルコ、泉北パンジョ、心斎橋ホワイトアベニュー、京都駅ポルタなどがあった。
バーゲン時には、スポット枠はSC物件で一杯になった。
今では、全く考えられないことだ。


降る雪や 昭和は 遠くなりにけり


さて、昔話ばかり書いてしまって、そろそろ皆さん退屈されはじめたかな、もう少し辛抱してくだされ。
などとワアワアやっているうちに、バブル到来。
FM局も次々に生まれるし、90年代までは話題が一杯だった。
ただ、この頃になると、もはやニューファミリーという言葉も失速し、オーディオ関係の出稿は激減、また女性層は専らテレビや雑誌への出稿で事足りるようになった。
ラジオは家で聴くよりも車で聴くようになり、自家用車、ガソリン、損害保険など、カー関連のクライアントが伸びてくる。
バブルだから、高い車が面白いように売れたし、外車のディーラーからの出稿も目立った。
そしてCDのミリオンセラーが松任谷由実という歌姫を得ることによって、常態化しはじめ、音楽系の出稿もFMにどんどん向かい始める。
J-WAVEの開局、FM802の開局、802はヘビーローテーションを武器に、新しいアーチストをレコード会社と組んで次々にスター化させていった。
あげくは、ヘビーローテーションまで売りに出すFM局が現れ、50万、100万という金が各ローカル局にまでばら撒かれるようになる。
そして、バブルがはじける・・・。
FM局は、一瞬沈黙し、そして長期低落の時代が始まることになるのだ。
(続く)



ラジオ業界の現状

さて、しばらく放送業界、とりわけラジオ業界の具体的な話を書く。
多分、どこからか苦情が来るかもしれないが、その時はその時ということで。


ラジオ業界、売上はご承知のように漸減の一途だ。
総務省が昨年9月に発表した「平成22年度の民間放送事業者の収支状況」を見てもお分かりの通り、昨年度に比べ5%前後減少している。

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu09_01000029.html

テレビ業界はほぼ横ばい、テレビショッピング枠を増やすことによって、何とか昨年度の売上を維持しているというのが実情だろう。
テレビショッピング枠、何しろ「ジャパネットたかた」を始めてとして、制作費はいらないし結構な電波料を払ってくれるし、言うことはないだろう。
そりゃ、制作費や人件費をはじめ諸経費をぐんと落とせるのだから、利益が計上できるのもむべなるかな。
ただ、問題は、テレビショッピングが拡大しすぎて、これまでのような収益が上がるのかどうか。
今更、ショップ番組なしになったら、それを埋める収益源が見当たらないだろう。
ということで、今年は、テレビショッピングがどう変わっていくか、テレビ業界の売上はそれで相当左右されるような気がするのだが。


さてラジオである。
こちらもラジオショッピングで健闘しているようにも見えるが、もはやこれ以上の伸び代は考えられない。
ラジオは、音だけが頼りなのだが、その音、すなわち無意味なショッピングの売り言葉に辟易しているリスナーも多い。
テレビは、ショッピングが始まればザッピングで逃げられるが、ラジオは簡単には他局へ移動できない。
やはり、ラジオをわざわざ聴いてくださっている人は、テレビのような一見の客ではない。
そんなご贔屓をいただいているお客様(リスナー)に対して、無意味な、本当かよ?と思いたくなるような、ヨイショ満載のラジオショッピングなんか、よく聞かせるものだと心から思う。


でも、ご贔屓筋のリスナーさんは、よく事情がわかっておられる。
他のスポット枠を聞いていても、どうもあまり商売になっていないというか、クライアントの数が少ない。
下手をすれば、社告とACばかりが流れてくる。
ああ、大変なんだ、出演者の皆さんも、みんな日々のお金をかせごうとがんばっておられるんだ。
仕方がない、不愉快だけど聞いてやろう、自分でも買ってもいいかなと思うのがあったら買ってあげよう。
でも、できればないほうがいいんだけど・・・。
大阪の若者に大人気と謳われたFM802も、背に腹は変えられずとラジオショッピングに手を染めて2年かな。
コアなリスナーからは、いい加減やめてほしいという声も多いが、ま、現実には無理だろうな。


いやショッピングの話をするつもりはなかった。
で、今年度はどうなのか。
ある関係者によれば、昨年度比90%が基本だとのこと。
それに各局が色々な努力をして、何とか年度末までに100%に近いところまで持って行きたいらしいのだが、最終的には95%がいいところではないか。
増える理由がないらしい。


radikoは、何度もいうが、今のところ商売になる要素はない。
ラジオという媒体にもっと注意をむけてほしいという声は聞くが、radikoに関心のあるクライアントは元からラジオに関心を持っていただろう。
たいていのクライアントは、radiko?だから何?というのが本音ではないだろうか。
前にラジオをラジオのままradikoにしても、若者の新しい関心なんか呼び起こせないよと私は書いた。
新しい関心を呼び起こせなければ、離れていったクライアントを呼びもどすことが簡単なわけないだろう。
「はじめまして、ラジオです」なんて遅ればせながら、ラジオ共同企画などが始まっているが、それが何かムーブメントを生むまでには行っていない。
とにかく、発想が古いというか、旧態依然というか。


ま、現場の人たちはみんなわかっているんでしょうけどね。
それしか、今のポテンシャルではやれないんだろうな、弾もないのに戦争はできないのは当たり前か。


さて、次回は私の古巣のFM局を例にあげて、今後のラジオ業界を考えてみたい。
そろそろ話がやばくなるかな。



ビジネスで必要とされる「認知的スキル」(第2回)

田中昌弘氏が提唱したビジネスで必要とされる認知的スキルの3C。
①新しいモノや組み合わせを考えつく能力ー創造力(Creativity)
②相手が何を欲しいかを察して引き出す能力ーコミュニケーション力(Communication)
③新しい感性に訴え、「クール」であることを判断できる能力ー美的センス(Cool)


正直、個人的にはあまりすっきりしないネーミングなのだが、「欧米では、認知的スキル(Cognitive Skills)と呼ばれている」と書かれているので、とりあえずこれを前提にして話を進めたい。
で、これらの能力の獲得には、幼少時の3つの家庭環境が重要とOECDが言っているそうだ。 
(OECD、経済開発協力機構が何故?という気もあるが、無視して先へ行く。)
1つは、家庭での本の量、親が本を読めば子供も読むからということ。ま、それはよくわかる。
2つめは、親同士が知的会話をしているかどうか。親同士の会話を聞いてコミュニケーション力が鍛えられるらしい。
3つめは、親が美術展やコンサートに子供をを連れて行くかどうか、それが美的センスを養う・・だそうである。
どうも、知的家庭に育たなければ、ビジネスで必要とされる認知的スキルは自然に身につかないようだ。


そうですかね?
証明のしようがないが、確かにそういう環境にあったほうが、そのスキルとやらは育まれやすいのかも。


さて、抽象的な話をしていても、コミュニケーションは成立しないかもしれないので、具体的な話を交えながらメディア論を書いてみたい。
放送局、例えば部の会議などで、この認知的スキルはどれだけ必要だろうか。
新しいものを作る能力、創造力、まずそんな話は議題には載らないだろう。
創造力というのは、議題にするにはあやふやすぎる。
初期においてはきわめてパーソナルなもので、そんな話を会議でされても困るとほとんどの管理者は思うだろう。
私が営業時代、そういう関連の提起、すなわち今までの方法論ではクライアントはつかめない、新しくこうしたらどうだろうという提言をしたことがあるが、そんな話を営業の会議に持ち出すなと叱られたことがある。
方法論は決まっているのである。
お前たちは決められたことをその通りやるのが仕事だ。
その結果を報告するのが営業会議であり、おまえの意見を聞く場ではないというのだ。
じゃ、私が自分の意見を述べる場はどこにあるのだと反論したが、しらけた空気が残るだけだった。
同じように制作部の会議でも、こういう番組をするべきだ、こういう企画を提案したいという話をしたが、君の意見は意見として聞いておくで終わってしまった。
会議は上からの指示を伝える場であり、ボトムアップの場ではないという風に私は感じた。
創造性、多分、放送局の公的な場には不似合いなのだろう。


コミニュケーション力、ほとんどの放送局員には苦手な分野ではないだろうか。
本当に人付き合いが悪い人が多い。
自分の意見に頑固だし、何か上から怒られたり、人事異動で不当な仕打ちをうけたりしたら、とたんに精神的に落ち込んだりする。
確かに、神経質な人も多いし、それだけ繊細なのだろうが、多くのリスナーを相手に仕事をしている貴方が、そんなことで一々傷ついていていいのかとよく思った。
夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、皆さん精神的にはとても柔であったことは間違いないが、何も放送局のあなたが一緒になって精神的柔であることはなかろう。
放送マンなんて、文学の大家が持った繊細さなんか望まれていないんじゃないの?


思うんですよ、放送局の人はもっとコミュニケーション力を養ったほうがいいと。
今でも、古巣のFM局に行った時、ちゃんと私に挨拶してくる人なんて少数派ですよ。(外部のスタッフの人のほうが、ずっと愛想がいい。)
いえ、誤解しないでください、よくある辞めた人を見る冷たい視線じゃないんです。
多分、何しにきたんだろう、下手をしたら、何かされるんじゃないか、という目なんです。
何者に対しても抗えない目というのですかね。
どこにコミュニケーション力が感じられましょう。


さて、最後のクールですが、多分本人は皆さん自分はクールだと思っているでしょうね。
自分は放送局に入ったんだ、それだけでクールではないかと。
クールとは、普遍的な価値観ではないと私は思うんです。
今、何が大衆の好みに合うのか、アトラクティブであるのか、ニーズと対応するのか、それを見極める能力がクールなのです。
過去の価値観で何とかやりすごそうとするものに、クール感覚はありません。
「変らずに生きてゆくためには、自分が変らねばならない」という映画「山猫」のセリフ。
クールとは、そういう自分を変えようとする意志と不可分なのではないかと。l


ということで、ラジオ関係者が如何にビジネスで必要とされる認知的スキルを持たないかを書いてみました。
そういうスキルを持たずに、新しい時代に挑戦しようとする放送業界の現状を次回に取り上げてみたいと思います。
ますます、ええ加減にしろよという声が大きくなるのを感じつつ。