カテゴリー : 2012年 3月

シリーズ 広告代理店・15 ~羊頭狗肉

一冊の本を読みました。
「なぜ、テレビCMをやめると売上げがあがるのか?」(主藤孝司著 ゴマブックス刊)という本で、「面白いほど行列ができるバイブルマーケティングのすすめ」という副題がついています。
至極真っ当なマーケティングの本で、プッシュ型の広告からプル型の広告への転換をすすめていると私は理解しました。
しかし、タイトルと副題には大いに不満というか、表題にもあげたように、まさに羊頭狗肉とも言うべき内容でした。


テレビCMをやめると売上げが上がるとは、本文ではどこにも書かれていません。
テレビCMはプッシュ型広告で、これからはプル型広告が主流になるから需要は減るだろういうニュアンスの話はあります。
しかし、やめたから売上げが上がるとは書いていない、これは絶対に看板に偽りあり、の典型でしょう。
副題の「行列ができる」とも、書かれていない。
早い話、これは著書とは関係なく、編集部がこういうタイトルにして副題をつければ人目につく、売れると踏んだからでしょう。
正直、あざといやり方です、プッシュだプルだという以前の問題。
何考えて、こんなタイトルをつけるんだ、売れたら中味が違っていてもいいのかよ、と毒づきたくなります。


羊頭狗肉、商売人の風上にも置けません。
とはいえ、考えてみたら、こういうやり方、広告代理店が一番得意とすることではないかと思わないでもありません。
いや、テレビ番組でも、こういう内容のもの、最近はますます増えているような気がします。
これを食べたら○○になるといって、事前に業界に情報を流し、お店に客が殺到なんて話もありました。
得意とするところですよね、テレビの。
「この後、衝撃の結末が」と言ってコマーシャルに行き、終わって出てきたものは衝撃でも何でもない当たり前の結果だったりします。
「この後、誰それがとんでもない展開に」と言ってCM、終わればいきなり来週の予告を少しするだけだったり、何考えているんだ、いい加減にしろとテレビに向かって悪態をついた人、一杯いることでしょう。
テレビはタダだから、羊頭狗肉も当たり前だ、それぐらい我慢しろといいたいのでしょうか。
とにかく、テレビ局はCMさえ視聴者に見てもらえればいい、そのためには多少の嘘もありだと思っているのでしょう。
ふざけんなよ、ですね、ほんと。


マーケティングだ、なんだかんだ言いますが、言葉を変えたら如何に消費者をわからないようにだますかの方程式の開拓ではありませんか。
何故そこまでして、人をだましてでも利益を上げようとするのでしょうか。
広告代理店は、マインドコントロールがお好きなのでしょうか、自分はだまされたくないが、消費者は俺たちの仕掛けた罠にどんどん落ちてほしいと思っていませんか。


そういえば、サブリミナル効果というのもありましたね。
意識できない層に知らない間に情報を浸透させるという広告の方法論というのでしょうか、こんなことも結果さえ出ればOKじゃんと思っているのが、広告代理店なんでしょう、違います?
もっと真っ当に商売できないのですか?皆さん。
ラジオショッピングが胡散臭いと思うのも、レスポンス広告を何だかなあと思うのも、根本にはマインドコントロールによって消費者に購買意識を持たせようというダークサイドの意志を感じるからではないですか。


オセロの中島知子さんの話をテレビがさも重要そうに報道していますが、これもそういうマインドコントロール的な手法に対し、テレビが親和性があるゆえではないかと思わないでもありません。
自分たちがいつもやっていること、その方法論の上にオセロの中島さんもいるのです。
そりゃ、面白いでしょう、テレビ関係者の方。
雑誌社もそうですね、悪いけどほとんどの記事を第一次情報ではなく、二次情報、三次情報を適当にアレンジして、さもそういう事実があるかのように書くのが週刊誌のような雑誌群ではないですか。
消費者がタイトルを見て買ってくれればいいのです。
ほとんどが羊頭狗肉でも、話題になれば勝ちなのです。
広告代理店も喜んでそういう雑誌に広告を流し込むます。
真実なんか、商売の前には大した価値を持っていない、それが広告代理店に内包する志向ではないでしょうか。


羊頭狗肉、その自覚もないまま、今日も広告代理店と組んで、マスコミ業界は繰り返しています。
そんな商売、早くつぶれるべきだ、胡散臭いと思う気持ちの後に、どうしてもそういう感情がわきあがることを私は抑えることができません。




シリーズ 広告代理店・14

民放のテレビ局やラジオの局のビジネスモデルを作ったのは、広告代理店だというのが私の意見ですが、最近では顕著な例としてレスポンス広告が増えていることが挙げられるでしょう
レスポンス広告、ネットで調べると、「商品や企業などの認知度を高めるイメージ(ブランド)広告に対して、ダイレクトレスポンス広告は直接、顧客からの注文や問い合わせを受け付けることが目的の広告。通信販売が代表的。」などと出てきます。
イメージを訴求するメディアとしては、ラジオ媒体は限界に達しているという言い方もよくされるようです。


この話、何年か前になりますが、ラジオ局の役員からため息混じりに言われました。
「先日、代理店の役員と話していたのだが、これからはラジオはレスポンス広告の時代だ。もはやかつてのようなビジネスモデルに固執すべきじゃない。レスポンス広告に応じるなら、もっとラジオを採用できるので考えてくれと言われたんだ。そんなこと言われてもね。」
その後紆余曲折があり、レスポンス広告はラジオ売上の主要な要素となるようになり今に至っています。
レスポンス広告といえば、何といっても「再春館製薬」の痛散湯ですね、それから自動車保険のアクサダイレクトなどもそうです。
で、この場合のレスポンス広告のシステムを私なりにまとめてみます。
あまりご存じない方も多いと思われますので。


ラジオ局は、レスポンス広告のスポット(長秒数が多い)を流します。
ほとんどがサンプル進呈とか資料請求の案内スポットで、リスナーからの反応はフリーダイヤルの電話というのが一般的です。
いわゆる、ダイレクトなレスポンスがクライアントのコールセンターに集まるわけです。
そのレスポンスの数に例えば1万円をかける、それがクライアントから放送局に払われる広告料になるわけです。
1回のスポットで100人のレスポンスがあれば、100万円の売上になるわけで、それほど悪い商売ではない感じもします。
しかし、もしスポットの返りが1本も電話がかかって来なかったら、放送局には1円も入りません。
ただでスポットを打てるわけですから、得をするのはクライアントだけということにもなりかねない。
最初は、その理由を持って、難色を示す放送局も多かったようです。


とはいえ、自分たちの媒体力に自信をもっていたラジオ局、例えばラジオショッピングで抜群の反応を得ていた局は、レスポンス広告でも、そこそこの反応を得ることに成功しました。
そうなると、他の局も黙っていられなくなります。
断るということは、媒体力に自信がないからだ、リスナーの獲得にも失敗しているからだと思われかねません。
そして、このレスポンス広告は、今やほとんどのラジオ局で行われています。
何としてもレスポンスがほしい局は、ワイド番組のパーソナリティの声で、資料請求はどちらまでと声高に叫びます。
正直、ラジオの世界で生きていた私からすると、この状況、あまり好きにはなれないというか、ラジオはクライアントがらみのレスポンスを餓鬼のように欲しがるのではなく、リスナーとのコミュニケーションの中から、クライアントのブランドを構築するメディアとして、もう一度勝負してほしいと思うのです。
少なくとも、ラジオの放送の上では。(ダイレクトレスポンスには、自局のウェブサイト等のインターネットを使えばいいのにと。)


ある人はこういいました。
レスポンス広告なんか、ラジオ局がいいように利用されているとも言えなくはないよ。
何しろ、リスナーから電話がかかってくれば、それが顧客名簿にデータ化されるわけだ。
一度データ化されれば、クライアントはもはや放送を介しなくともリスナーとコミュニケートできる。
だから、一人の顧客をつかまえれば、二度とラジオを介してコールセンターに電話してくることはない。
ラジオ局が日々、リスナーを拡大しているならまだしも、いわゆる壮年世代以降しか聞いておらず先細りすると危惧されているのが実際のところではないか。
レスポンスは、増えていくことはなく、今後減り続けるのは目に見えている。
これが新しいラジオのビジネスモデルと広告代理店に言われても、信じられないのだが。


スポンサーと直接にコミュニケーションをとっているリスナーが、新たにスポットを聞いたからと言って、その通りに電話するはずはない。
確かにそうですね。
常に新しいリスナーをつかみ続けなければ先細りというのは、誰が考えてもわかることです。
しかし、そうであっても、今のラジオ局、昔のように宣伝のためのスポットの数は、まさに数えるほどになってしまっています。
レスポンス広告であろうと、反応があれば金を払ってくれる、その仲介は代理店がとってくれるのですから、もはややめることはできないようです。
代理店からすると、これも十分自分たちの扱いですし、全放送局を対象にする限り、そこそこの売上にもなります。
レスポンスがなく、一円も払ってもらえないと内心不満に思っているラジオ局もあるでしょうが、そんなこと代理店にとっては知ったことではないでしょう。
レスポンスがあってこそのラジオでしょ?何言っているんですか、と言われればオシマイでしょうね。


ラジオショッピングと合わせて、ラジオ局としては本当はちゃんとビジネスモデルの見直しを図りたいところでしょうが、元々ラジオ局のそれを考えたのが代理店だったとすると、自分たちだけで新しい答をだすのは至難の業かもしれません。
もしそうだとするなら、皮肉なことだと言うしかないですね。




シリーズ 広告代理店・13~広告代理店とは

私の経験をベースに広告代理店の存在を語ってきましたが、今回は広告代理店そのものについて少し語ってみようかと思います。
広告代理店とは一体何なのでしょうか。
私が大学時代知らなかったぐらいですから、今も理解していない人、そこそこおられるのではないでしょうか。
簡単にいうと、新聞とか雑誌とかテレビとかラジオとか、いわゆるマスコミ4媒体の広告枠を広告を打ちたいと思っておられる企業等の広告主(スポンサー)に売り、手数料を得るビジネスです。
今は、これにインターネットというジャンルが加わり、従来の考え方を修正する必要がでてきています。
元々は、シンプルな構造で、広告枠を集めて広告主につなげる役目をしていました。
それが戦後民放テレビが生まれ、産業的に巨大化するに従って、単なる代理店といえるものではなくなっている、そんな気がしています。
代理店といえば、旅行代理店や保険代理店などが有名ですが、広告代理店はそれ以上に大規模に事業を展開し、巨大広告代理店にいたっては、産業の創造も含めて大きな影響を私たちの日々の生活に影響を与えていると言えるでしょう。


いわゆる総合広告代理店と呼ばれるような大規模な代理店は、おおよそ5つの領域(部門)を持っています。
1つは、アカウント領域、早い話営業領域です。
クライアントと日々接触し、広告計画立案の仕事を始め、イベントや媒体のバイングなどを受注します。
広告代理店の担当をAE、アカウント・エクゼクティブといいます。
広告代理店を代表して、広告主との連絡や折衝に当たる人と解説されていますが、AEとなると、その企業の広告計画を一手に引き受けているような存在に近くなります。
企業によっては、宣伝部は社内にあっても、実際の作業はすべて代理店(AE)にお任せなんてこともよくあるようです。


2つ目は、メディア領域、媒体との折衝やバイングをする部門です。
AEから、何月何日から、こことこことここで、こんな風に媒体を押さえてほしいという指示が来て、それを実行する部隊といいますか。
こういう商品を宣伝する時には、こういう媒体をこういう風に使えば効果があるというメニューを、日ごろから開発している部署でもあります。


3つ目は、マーケティング領域。
商品をどういう風にすれば、どれぐらい売れるかを、調査や統計を駆使することによってデータ化している部署といえるでしょう。
つまり、ここには広告に使えるデータが集積されています。
ビデオリサーチ他、いくつかの調査会社がありますが、マーケティング部門には、そことの連携も重要なファクターです。


そして、SPやPR領域。
セールス・プロモーション(販売促進)をSP、パブリック・リレーション(広報活動)をPRといいます。
お店をPRすると言い方をする人もいますが、これは宣伝をするという意味に使われることが多く、本来のPRとは少しニュアンスが違います。
SPは商品を売ることが目的ですが、PRは商品や企業のイメージをアップさせる、ブランド化するということが目的です。
会場で、商品の発表会を行ったりするのは、SPの仕事ということになりますね。


5つ目が、一番華やかに見えるクリエイティブ領域、企画・制作領域です。
コピーライターとかデザイナーとか、カメラマンとか、CMプランナーとか、最近ではテレビ番組や映画の企画部門とか。
広告代理店に憧れる人の多くは、このクリエイティブ部門を目指しておられるようです。
確かに、マスコミ的にスポットがあたる部門なので、一見充実した毎日が暮らせそうな感じもありますが、実際はそれは大変な世界です。
CM撮影で、ハワイに行ったり、有名な女優さんと話ができたり、女の子にモテモテなんてイメージが喧伝されていますが、そんなのはあったとしても、ほんの一部です。
好きでなければできない、それは例えばTVやラジオのディレクターも同じです。
精神的にどれだけ消耗するか、そしてその作業がいつ終わるかも知れず続くのです。
例え他の部署より、収入が多かったとしても、それは、自分の時間をほとんど仕事に使った結果です。
その金を使う時間なんか、ほとんどない。
そして、いつか捨てられる、「あ、あいつ、もうダメ、感覚古いし、扱いにくいから要らん!」と言われればオシマイ。
華やかな世界にはつきものの人間模様がそこにあるのです。


ということで、総合広告代理店には以上5つの部門によって成立しています。
中堅代理店になると、アカウント以外は、ほとんどアウトソーシングというところもあります。
何しろ、博報堂と大広と読売広告は媒体のバイングのために博報堂DYメディアパートナーズを作り、メディア領域を合理化してしまいましたから。
それに、厄介なインターネットが存在し、サイバーエージェントやオプト、メディックスなどのインターネット専門の広告代理店も伸びてきており、広告業界の再編も少しずつですが、始まって来ているようです。
機能的には、以上の5つの部門は存在するでしょうが、その形はますます変容していくことでしょう。
電通や博報堂の巨大広告代理店の時代がいつまで続くのか、なかなか楽ではないことは確かではないでしょうかね。