カテゴリー : 2012年 4月

シリーズ ラジオの売り方(3)

ラジオ局は自分でビジネスモデルを作ったことはない、というのが私の持論です。
商業放送というのは、専ら広告代理店によってビジネス化され、その延長戦で今があると思うのです。
FM局の例で少し考えてみましょう。
以下は、私のもう一つのブログ、「フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編」の「2009-09-14 失敗物語・5」で、書いたものです。

2006-09-03のこの欄で「コミュニティFMのイメージ」というタイトルをつけ、エフエム大分の失敗についてさらっと触れたことがあります。

その当時、私はよく1990年開局のFM大分の失敗を例に出したものである。
何をどう思ったのか、開局当時のFM大分の方は全部自社制作で経営ができると思われていたのだ。
だからJFNにも入らず、1年ほど続けていたのだが、結局ギブアップ。
放送局さえ作れば、その日からどんどん儲かるという神話は、あっという間に消え去ったのである。

もちろん、FM大分が失敗した話など、ウェブ上にはほとんど上がっていません。
ただ、FM大分の会長だった丹羽登さんが、「戦略の本質」(和田勲生著 ダイアモンド社刊)の書評でこう書いておられます。

エフエム大分の開局は、在京キー局から番組の配信を受けず、全番組を自社制作もしくはそれに準ずるもので構成する“独立局”としてスタートしました。
戦略を練りに練って、その道を選択したのならいいのですが、当時、独立局ブームだったこともあり、その流れのなかで取り組んだわけです。
しかし、地域性や聴取者のニーズを的確に把握できていないと判断し、もう一度じっくりと協議した結果、現体制となったわけです。

考えた上で、独立路線をとったのではなく、ブームだったからそれに乗っかったのだと書いておられるようです。
独立局というブームがあるから、うちも大丈夫だろうという発想、コミュニティFMの開局時にも同様のものがよく見られまた。
エフエム大分の方にとっても、県域FMとしてスタートできたことだけで一安心されたのだと思います。
後は、今一番はやっているのは、TFMの傘下に入ることではなく独立局として自分たちを差別化することだと考えて、JFNの加盟をせずに独自路線。
でも、東京での営業が思うようにいかず、制作費がリクープできないことに気づいて頭を下げてJFNに加盟。
当時、東京でその状況を間近で見た私には、とても印象深い失敗例となったのです。
1990年(平成2年)といえば、確かに東京や大阪の第二局、千葉、埼玉、京都、神戸と独立系のFM局が話題になっていましたから、独立局でも何とかなると思う気持ちはわかります。
しかし、JFNというものを少しでも知っていれば、大分というローカルでそれをやるのは無理だということは自ずとわかったはずです。
ある広告代理店の方も、それを強く主張されていました。
でも、結局聞いてもらえなかった、誰かとんでもなく間違った考え方をしているキーマンがいるみたいだと私にもため息混じりに話されていました。

ブームに乗ってしまったと書いておられますが、乗させようとする人々がまわりに大勢いたのでしょう。
大体、放送局を始める時に、その人たちは何を参考にしておられると思いますか。
とにかく、誰か詳しそうな人を呼んで、その人の言うとおりにするというのが多いんです、何故か。
例えば、J-WAVEとかFM802のように、そこそこ業務に精通していて、新しい放送局を作るんだという情熱にあふれた人が集まってきたら、それなりに形にはなります。
ところが、ほとんどの後発局(コミュニティFM含む)には、そんなイノベーションを起こせるような能力を持った人を呼び寄せる力はありません。
玉石混交のスタッフを集め、何かグダグダのままスタートするというのが普通です。(J-WAVEや802も、最初はグダグダだったはずです。でも時間が経つうちにバランスのいい編成に収斂させる力が彼らにはあったのです。)


とにかく放送局を始めた人たちにビジネスモデルなどありません。
やれば儲かるはず、それだけです。
何故なら、みんなそう言っていたから。
ローカル局はそれゆえ、キー局におんぶに抱っこになります。
キー局の人がいうことを必死になって勉強します。
は~なるほどね~、放送局というのはそういうものなんですね~。
キー局の人が言っていること、技術的なことや番組制作のことはマアマア独自のノーハウも持っておられたりしますが、営業的なものになると、ほとんどが大きな広告代理店からの受け売りだったりします。
(営業的というよりもマーケティング的といった方がより正確?)


言い換えれば、広告代理店は放送局に大きな下駄をはかせてくれていたのです。
その上で、放送局は商売してきた。
今のラジオ局、その大きな下駄が段々すりへってくると、自分ではどうしようもなくなり、こんなはずじゃなかったと言う間に、どんどん売上が落ちていったと言わざるをえないのです。
で、最近何と言っているか。
営業は、広告代理店をもっと回れ、もっと大きな下駄をはかせてもらおう!


そういう意味では、広告代理店にもう一度ビジネスモデルを作り直してもらうことには賛成です。
本当に作ってくれればの話ですが。
その端的な例がradikoだと思いますし、又これからも、もっと提示されてくるような気もします。
問題は、その広告代理店が、一部の局が熱心なV-lowデジタルラジオ放送にどれだけ熱心になってくれるか。
さて、どうなのでしょう、私の考えは….あ、また関係者から怒られるから今日はやめときます。
ということで、又次回。



シリーズ ラジオの売り方(2)

今、どんなラジオの売り方をしているのか、聞いてみました。
とにかく、もう一度広告代理店に頻繁に顔を出すようにして、クライアント情報を的確につかむこと。
大きな代理店に対しては、年代の違う担当を3人ぐらい配置し、それぞれの世代で役職者、中堅、若い現場の代理店マンをカバーするのだそうです。
とにかくクライアントを攻めるよりは、代理店を攻めるほうが今は効率がいい、そういう言い方をしていた人もおられました。
う~ん、相変わらず代理店だよりか~と思うかもしれません。


わからないでもないといいますか、今は広告宣伝の方法論が昔とは違うというのは事実のようです。
何しろ、インターネット広告が一般的になるにつれ、広告とは単純に露出すればいいということではなくなっているのです。
そこには、従来よりもより緻密な戦略が必要になる、またインターネット広告に関するデータの解析の仕方にも、より熟練しないといけないのです。・
1億円あれば、5千万がテレビ。3千万が新聞、1千万が雑誌で、残りがラジオその他。
これで、一応広告効果を測定、なんて単純なやり方は通用しません。


とにかく、まずインターネットでどう展開するかが検討され、それを補完する形で他のメディアの戦略を考えるというクライアントも出てきています。
電通の調査では、2011年の広告費、テレビ1.7兆円、インターネット8000億円です。
その差は、毎年少しずつ縮まっています。(ちなみに新聞は約6000億)
何しろユーザーは、年々テレビを見なくなり、その分PCや携帯、スマートフォンとの接触を増やしているのはまぎれもない事実です。
まずテレビありきで、プロモーションを考える時代ではなくなりつつあるといえましょう。


しかし、ユーザーの動態が劇的に変わりつつあるという認識はあっても、その動態に対応した広告戦略を考えるにはクライアント側は圧倒的に情報不足なのではないでしょうか。
インターネット、確かに効果は歴然としたところがあったとしても、技術革新が早すぎるため効果的に運用できないという傾向があるようです。


スマートフォンの普及、本当にすごいですよね。
私の鮮烈な記憶なのですが、昨年の3/11の東北大震災の時、私は地下鉄大江戸線に乗っていて、いきなりの激震に遭遇しました。
その時、一緒に乗り合わせていた乗客が、一心不乱に見ていたもののほとんどは携帯電話、ガラケーでした。
だれも、右手の人差し指をつかって画面をスクロールなどしていません。
その時にスマートフォンを使っていたのは、見たところ私一人という印象でした。
それがどうでしょう、わずか1年余り、今地下鉄に乗っていると、まわりの若い人の半分以上はスマートフォンです。
折りたたみのガラケーなどを出して見ている人は、ほとんど50代以上と思われるオジサン、オバサンばかり。
何となく、若い女性からもゴテゴテとデコレーションされたガラケーを見かけなくなった気がしませんか。
インターネット関連メディア、今やスマートフォンを広告メディアとしてどう利用するかを考えなければ、若者へのリーチはますます辛くなる、多分、広告業界の方はそれを痛感されているはずです。


ラジオの売り方、それはつまり、広告メディアにイノベーションが起きている、それをどこまでラジオ業界の人が認識しているかが重要なファクターではないかと思うわけです。
他の媒体でクライアントが広告を出しているから、うちにも出してください、提供してくだされば、あれもします、これもしますでは、もはやイノベーションに耐えられないでしょう、いかがですか。
ビジネスモデルを変えるべきだということです。
ラジオの生き方は、トータルな広告メディアのイノベーションに合わせて、変化していくべきだということです。
広告代理店に行くか行かないか、スポンサーに顔を出すか出さないか、キー局に泣きつくかどうかという話ではないはずです、もっと根本的な広告業界のイノベーションにどう対応するか、その議論抜きにしてこれからのラジオの生き方、売り方なんか考えるだに空しいのではないでしょうか。


もちろん、私が答を持っているわけではありません。
考え方を少しネット側にシフトしてみたらという気持ちはありますが、これが新しいビジネスモデルだと提案できるものは今の段階ではありません。
というか、まだ議論は始まったばかり、宇宙大作戦(スタートレック)のミスタースポック的にいえば「データ不足です、船長」と言うしかありません。
さて、そのデータ不足の中で、「SOSラジオエンタープライズ」はどこへ向かって飛び続けようとするのでしょうか。

~to be continued



シリーズ ラジオの売り方(1)

ラジオの生き残る道というシリーズをやりましたが、今回からしばらく具体的にラジオは何をどう売ったらいいのかについて、思いつきになるかもしれませんが書いていこうと思います。
もちろん、私は放送局の人間ではありませんから、机上の空論と言われてしまえばおしまいです。
それでも、ラジオ局の人の話を聞いていると、それじゃあ売れないだろうと思うことがしばしば。
細かい現場の情報を知らずして書いても説得力がないかもしれませんが、座興とでも思って業界の方にお付き合いいただければ幸いです。


さて、昨日久しぶりに現場でラジオの営業に努力されている人に会いました。
売上の方はどう?と聞く私に、最近は人が足りないので取りこぼしている物件が多い、少ない営業の数で100%以上の売上を要求されても無理だという返事。
ラジオのスタッフ、営業現場も制作現場も、相当へたっているのが現実らしいのです。
しかも、ラジオ局のほとんどの社員が年をとりすぎている印象。
20代、30代のキラキラした若者が社員にあまりいない。
いたとしても、多数を占める40代、50代に抑圧されている上に、給与ベースが異常に低い。
こんなの逆転していてもいいはず、そうすればもっと売上を伸ばそうというインセンティブが働くのにとぼやいておられました。


一言で言って、ラジオ局に人事政策がないのです。
今の時代のラジオ局に必要な人材とは何か。
どういう部署が必要で、そこにどれだけの人を配置すべきなのか。
給与体系は今までどおりでいいのか、またラインとスタッフの関係は現状でいいのか、等々。
組織変更を行います、新たに何とかという部署を置き、こういう仕事をします、なんてお知らせメールが届いたりするのですが、根本的な部分はあまり変わっていないというか、枝葉部分をいじるばかり。
何度も書きますが、選択と集中という考え方はあまり見当たらないのが現状です。


例えばこうです。
従来の総務部と技術部を統合し、管理本部を設置します。
営業部と事業部とマルチメディア部を統合して、事業本部を設置します。
制作部と編成部を統合して、編成制作本部を設置します。
これらの3本部を相互に関連させて、強力なトライアングルを形成し、売上アップをめざします。


何か、こう書けば組織が変わったというか、よりインテグレートした気になるのでしょうか。
しかし、過去の部を統合したといっても、その仕事は過去のまま残っているのです。
下手をすれば、前の部の名前がそのまま残ったりして。
組織を変えるというのなら本部だけにすべきで、後はそれぞれの仕事の担当がいるだけにすれば、外から見たら「ほう~」なんて思えるかもしれません。
しかし、本部長は増えても、従来の部長を減らせない。
ピラミッド構造がそのまま、これで変わったとは下の人間からすれば全く思えないのではないでしょうか。
命令系統がややこしくなっただけではないか。
そりゃ、40代、50代がわんさかいて、その下の20代、30代からすれば、こいつらイランだろうと考えるのは当たり前じゃないでしょうか。
本部制にして、組織をシンプルにし、管理職の数も思い切りカット。
本部長の下に、スタッフが横にずらっと並ぶ形にすれば、各人の裁量も広がり、それぞれが思った方向へショットガンのように飛び出せるのではないかと。


私がいたFM大阪、社員の数は今や半分近くまで減っています。
なのに、組織体制はほとんど変わっていません。
おかしいと思いませんか、社員が半分減れば、部の数とか管理職の数とか、半分になるのが当然です。
管理職ばかり増えて、平社員はがた減り。
その分を外にアウトソーシングというか、制作会社や派遣や契約外交員に頼るようになってしまっています。
こんな体制で、放送局にはとりわけ必要なクリエイティビティや発想とかが育ちますか。
サブカルチャーへのシンパシーが生まれますか、イノベーションを起こす土壌を養えますか。


人を育てる伝統がラジオから消えている、私は最近それを強く感じるようになっています。
それゆえ、ラジオの現場が面白くない。
ラジオはもっと夢のあるものでなければならない。
ラジオはもっと人の心をかき混ぜるものでなくてはならない。
メディア イズ メッセージ そして、メディア イズ マッサージ。
忘れかけていた歌を、またラジオは歌わないと生き残れない、私は心からそう思っている次第です。