カテゴリー : 2012年 6月

radikoとIPv6

今日のImpress Watchに、radiko関連のニュースがあった。

「radiko.jp」安定運用に向けて新会社設立、NTTスマートコネクトら3社で
 NTTスマートコネクト株式会社、株式会社radiko、朝日放送株式会社の3社は28日、IPサイマルラジオ配信サービス「radiko.jp」の安定運用および品質向上を目的に、新会社「株式会社メディアプラットフォームラボ」を共同設立すると発表した。7月2日発足予定。

何のための会社かなと思って、NTTスマートコネクトのニュースリリースを見るとこうあった。

『radiko.jp』は、スマートフォン等の新たな聴取環境にいち早く対応し、番組と連動して画面上に関連情報や出演者画像を表示させたり、各種 SNSとの連携により、番組制作側と聴取者だけでなく、聴取者同士での新たなコミュニケーションも生みだす等、聴取者の聴取スタイルを、従来の”聴くだけの『radiko.jp』”から、”参加して、楽しむ『radiko.jp』”へと変革させつつあり、今後もインターネットの特性を生かした新たなラジオの楽しみ方、新たなサービスを創造し続けることで、更なる聴取者の裾野拡大を目指しています。

お、私がこれまで指摘してきた新しいradikoのビジネスモデルを追及する会社ができたのかなと思って、文面を読むと業務の内容が次のように羅列されていた。

(1)『radiko.jp』の配信プラットフォームの運用管理
 参加局拡大に伴うメディアセンターの運用複雑化に対応し、一元的なマネジメントによる効率的かつ安定した『radiko.jp』の配信プラットフォームの運用管理。
(2)『radiko.jp』の新規ビジネス開発
 『radiko.jp』の運用における配信センターのリソースを活用した、新たなビジネス(収益元)の開発。
(3)次世代のメディアプラットフォームの設計、技術開発
 更なるコストメリット及び収益の拡大を目指し、『radiko.jp』の配信プラットフォーム運用と新規ビジネス開発を通じて得たノウハウをradiko以外にも水平展開。

う~ん、配信センターのリソースとは何ぞや?radiko以外にも水平展開って?
正直、これだけでは解釈の仕様がない。
おそらくradikoの画期的なプラットフォームサイトの構築と、放送コンテンツ及び顧客のデータベースを一元管理し、そのシステムをradiko以外のIPサイマルキャスト放送にも使えるようにするということなのかなあ。


また、NTTスマートコネクトは、同じ7/2から、次のようなサービスを開始するというニュースリリースを出している。

IPv6に関する豊富な実績を有するNTTスマートコネクトは、「mediaCONNECT(メディアコネクト)」をIPv6対応することで、お客様のIPv6インターネットへの円滑な移行をサポートすることとしました。

おそらくradikoも早晩IPv6対応を始めるのではないかと思う。
これで、ユーザーの属性をつかむことが可能になり、新しいビジネスモデルも生まれやすくなる。
radikoの外堀を、通信業界が着々と埋め始めているという印象だろうか。


なお、朝日放送が何故加わっているのかと思われるかもしれないが、あまり公になっていないが、全国のラジオは一度大阪の朝日放送に集められ、そこからネット回線に流れていると聞いている。
多分、そのあたりのネット配信システムを構築してきた朝日放送が今後もその任を担うということになったのだろう。
しかし、こういう話、そんなにすんなり進んで行っていいものなのかなと思わないでもないのだが、他の局は不満はないのだろうか。
radikoの話、これからも何かと新しい情報が出てくると思われるが、その具体的な可能性を云々できるのはいつの日のことだろう。
7/2の新会社の発足、そこから何が生まれてくるのか、こちらも目が話せないようになりそうだ。



日々雑感~佐久間正英さんのブログ他

メールなどを頂戴した皆様へ。
いつもこの欄をご覧いただきありがとうございます。
メールやコメントで感想を頂戴するのは、励みにもなりとても嬉しく思っています。
ただ、申し訳ないことに、いくつかのお申し出、ご要望にはなかなか応じられない状況で、お返事をすることができません。
その旨、ご了承いただきたく、冒頭で書かせていただきました。
今後ともよろしくお願いします。


さて、今日は前から気になっていたブログをご紹介したいと思います。
音楽プロデューサー、佐久間正英さんが書かれているもので、BLOGOSには次のように紹介されています。

BOØWY、JUDY AND MARY、GLAY、THE BLUE HEARTS、黒夢、くるりなど、数多くのミュージシャンのプロデュースを手がけてきた音楽プロデューサー・佐久間正英氏。音楽業界で長年ビジネスと制作の両面で活躍してきた佐久間氏が自身のFacebook・ブログ連続でアップした「音楽家が音楽を諦める時」「昨夜の投稿の追加文」「音楽における音情報」の3エントリが大きな話題を呼んだ。

詳しくは同ブログを読んでいただくのが一番いいのですが、早い話、音楽制作の現場が安易に流れ始めており、本当の音楽を制作できる環境にないということをやんわりと告発されているのだと感じています。
初めて佐久間さんのブログを読んだのは、大阪にあるライブハウスの方が「これを読むと、東京でも音楽制作の現場は絶望的なのに愕然とする」と言っておられたのを知ってからでした。
「音楽が音楽を諦める時」を読んだ時の衝撃というのは、私もそこそこありました。
そうだよな、職人的には作れと言われれば、安い費用でも何とか音楽を作ることはできるけど、そんな安直なやり方で音楽を作っても空しいだけだろうなと共感した次第です。


音楽を作るのに、そんなに金は要らないだろう。
今の音楽業界人は、金をぼったくっているだけだという批判が、その後、何故かネットに広がり、佐久間さんはその反響に対応するかのように、第二弾、第三弾を書かれたというわけです。
確かに現場の最先端にいる人だからこそ、わかる話かもしれません。
それを一般の人に説明したところで伝わらないだろう、いや業界人だってそんな風に思っている人もいないとは限りません。


同じことラジオの世界でも言えるんです。
今、例えば30分の番組を作るとして、制作費はどれぐらいかご存知でしょうか。
30万円あればいいほうなんです。
それも1ヶ月ですよ。
外の制作スタジオを借り、DJのギャラを払い、フリーのディレクターを使っていたら、制作会社にはほとんど利益は残りません。
いきおい、1回2本取り、3本取り。
そんな番組が面白くなると思いますか。

やはり、面白い番組を作るには余裕が必要なのです。
リダンダンシーの問題ということになるのかもしれません。
漫然と時間を埋めているだけの番組は下方スパイラルを作り出していくではないかと思うのです。
ラジオ番組の制作者が共有しなければならないことは、日々同じことを繰り返す中から、新しい発見を見つけ、更に面白い番組、皆に支持される番組を作り出していこうとするスタンスなのです。
下方スパイラル、あるいは同じところをぐるぐる回っているだけの番組に未来はありません。
その創意工夫のためには時間がいりますし、その時間を独占できる費用が必要なのです。
今のラジオ局、その費用を制作費削減の名の下にカットしているのが現状です。
そんな余裕、要らんだろう。
これぐらいの番組、みんなこれぐらいの費用で作っている。
それができないなら、やめてくれと言われかねません。

金がいるとかいらないとかいう話ではないのです。
次の時代を作るための投資をけちれば、その文化は衰退します。
文化はラジオ局だけで作られるものではありません。
リスナーやクライアントとともに日々作られるのです。
そこに投じられる金が減れば、当然ながら全体として衰退します。
大和魂があれば、大砲にも爆撃機にも勝つはず、などと喧伝した時代と同じ。
こんな装備で戦争なんかできない、ラジオ局の現場もまた制作者たちには自分たちの戦場のはず。
ここで戦えと言われて、細々とごまかしごまかしやっていても、新しいことなど生まれない、第一楽しくない、面白くない。

音楽が衰退するように、ラジオも衰退する。
音楽業界はAKBでごまかし、ラジオはショッピングでごまかしているのかもしれません。
しかし、それが本当の答ではないことは、皆さん何となく感じておられるのではないでしょうか。
音楽が消える日はいつか?ラジオが消える日はいつか?
もちろん、そんな日は来て欲しくありません。
それゆえに、佐久間さんは声を上げられたのだろうし、私も同じように自分のブログで余計なお世話を毎回書き続けているのです。
佐久間さんのその後については、最初にとりあげたBLOGOSのインタビューで読めますので、よろしければ参照してください。
ということで、今日は単なる私のぼやきということでお許しを。


最後の護送船団~マスコミ

「最後の護送船団とも呼ばれてきたマスコミ業界は、言論機関であるというおごりと行政の保護によって、本来やるべき体質改善をなおざりにしてきた」(河内孝「次に来るメディアは何か」 ちくま新書)
河内孝氏は元毎日新聞社の記者で、「新聞社ー破綻したビジネスモデル」(新潮新書)という著書もある人だ。
この本に関しては別に取り上げたいが、護送船団方式が今も継続しているのはマスコミぐらい、という考え方には賛同する。
中にいるとわからないようだ。


マスコミがいかに国家によって守られているか、また制度によって今の待遇を維持できているか。
ラジオ業界が完全に右肩下がりなので、自分たちが守られていることにまで意識が回らない。
いや、国家はもっとマスコミ業界を守るべきだと言いかねない。
自分たちの権益を守りたい、守れないなら別の電波を寄越せ、みたいな流れになっている。
それが複数の放送局を持てるように制度改正したり、新しい電波に占有権を主張したり。
radikoを中途半端な存在で放置した形になっているのも、結局権益がそこから失われるのではないかという危惧があるからだろう。


この国は、一度権益を手中に入れると、行政がそれを保護してくれるというシステムになっている。
ベンチャービジネスが、自分の力で何とか事業を成功させても、行政にある部分を委ねない限り権益とはみなされず、挙句には何だかんだとイチャモンをつけては、公権力によって破壊される。
ホリエモンのライブドアなんかはその典型。
早い話、今の権力機構に従属することを宣誓しなければ、権益は保証されないことになっている。
村なんだろうな、まだ日本という国の形態は。
大体、堀江さん、何故こんな時期に刑務所で不自由な生活を強いられないといけないのか。
その国家的損失を考えたことはあるのだろうか。
刑務所に入れないといけない連中なんか、他に山ほどいる。
そいつがいなければ、日本の地位はもっと上がるのではと思う人もいる。
新聞業界にも、権益に胡坐をかいて好き放題している御仁もおられるようだが、いわば護送船団の総司令官みたいな人だから誰も口出しできない。
敵に回して恐ろしい組織。
マスコミ、財務省(税務署)、検察庁・・・・。


ラジオが消える日はいつだろう?と私に問いかけてこられた先輩がいたことは前に書いた。
ラジオだけではない、新聞もビジネスモデルが破綻しかかっているのだと言われると、本当に何の対策も打てないままダラダラ現状を維持していていいのかという気になってくる。
「止まらない読者の減少、低下し続ける広告収入、ITの包囲網、消費税アップ、特殊指定の見直し―そして何より、金科玉条としてきた<部数至上主義>すなわち泥沼の販売競争は、すでに限界を超えている。」(「新聞社―破綻したビジネスモデル」より)


2012年の今、私はこうやって幾つかの不安感を言葉に換えているわけだが、後10年したら、いやそこまで行かずとも後5年、3年で、全く違ったマスコミ業界になっているような気もする。
事件は会議室で起こっているのではない、現場で起こっているのだというセリフがあった。
多分、業界人の知らないところで、ユーザーが日々弄ぶネットの中で、マグマのように次のトレントが胎動しているに違いない。
それが破壊的イノベーションを齎すなら、もはや古いラジオ人の住む世界はなくなる。
それに抗うことがどこまでできるのか。
逃げ切りのうまい世代である、何だかんだと理屈をつけては被害が来ないように仕向ける努力をするだろう。
いずれにせよ、来年のことすら確実でない今の時代。
政治が混沌とする中、放送業界も音楽業界も、一寸先は闇なのである。