カテゴリー : 2013年 6月

ラジオにまつわるエトセトラ(2)

「他人が彼に対して何かを期待し要求してくれた。
それに応えることで、彼の人生はそれなりに忙しく回っていた。
しかし、その要求や期待がいったん消えてしまうと、あとには語るに足るものは名も残らなかった。」
(村上春樹「1Q84」第2巻)

要求や期待が消える、男の世界に顕著なことかもしれない。
いや、大きな要求や期待が私にかけられているのだと思えばこそ、男は必死になって働いたのかもしれない。
それを社会が肩書で答えたり、名誉的地位で答えたり、金という抽象で答えたのだろう。


課長になること、部長になること、そしていつかは社長になって、自分の名誉欲を思い切り充足させたい。
そんなサラリーマン、見あきるほど見てきた。
放送局も同じ。
出世しないと、自分のやりたいことはできないと思い、とにかく一歩一歩、自分をごまかしながら階段を上る。
そして、ある日、頂上が見えた時、ふと思う、自分は一体何をしてきたのか?と。
年をとり、人生の中で最高に輝いていた時をずっと記憶の中に大事にするしか、自分を確認することができない。
ある意味、多くの人は敗残兵だ。
でも、自発的に兵になったわけではない人は、年をとっても自然に生きている。
兵であった時は、それほど輝いてはいなかった。
だから、今も輝いていなくとも、それを恨むこともないだろう。


期待されている、何かを要求されている、年をとれば、その実感は漸減する。
老いてなお、他者からの期待も要求も変わらない人は、ある意味幸せ。
金がなくとも、社会的な評価がそれほど高くなくとも、コンスタントに他者とつきあえた人は泰然と老いを迎えることができるような気がする。
語るに足るものが残らなくとも、ケセラセラ・・・。


さて、前回を受ける形で、思うことを書いてみた。
最近、期待されても要求されても、あまり対応したくなくなった、それが今の実感。
このままフェイドアウトしたいとも思わぬが、いいように便利扱いされるのはご免だ。


今の私に、ラジオ業界から期待されたり要求されたりしていることがあるかというと、さてどうだろう。
一部の人たちは、次に何をするかを興味を持って見られているようだ。
何かの参考にしたい、できれば手伝ってほしい、そう思っている人もいないではない。
だが、大部分の関係者にとっては、もはや終わった人、いや早く終わってほしい人と思われている気がする。
何しろ、この10年ぐらいに業界に入ってきた人には、私は関係のない世界の人だ。
言っていることも、何言っているのか、よくわからないようでもある。
そして、そのラジオ業界の空気の中に、もはや正のエネルギーは醸成されていない。
元気だったラジオを知らぬ世代が、ラジオの現場を管理している。
ただ繰り返すだけ。
金になりそうなことを、ただ電波にはりつけるだけ。
そんな手抜きの商品に、一流クライアントが魅力を感じるわけはない。


FMCOCOLO、45歳以上をターゲット、曲はその世代が喜んで受け入れられるものを中心にオンエア。
安心して聞ける、45歳以上のリスナーは。
でも、それで商売になるのだろうか、どういうマーケティングをしているのか教えてほしい。
45歳以上が望んでいる情報は、過去の音楽そのものではない。
今、自分に必要な情報だ、健康とか、経済とか、人間関係とか、老後の問題とか。
COCOLOは何一つ応えていない。
ただ、45歳以上が聞いて邪魔にならない曲をかけるだけ。
BGに使えます、聴取率も上がっています。
でも、メッセージがない、802が開局の時どれだけ若者にエネルギーを与えたか。
何か、これが俺たちのメディアだ、何てエキサイティングなんだと思わせたはずだ。
それはFM大阪でも70年代に起きたことだ。
何も802が群を抜いて際立っていたのはではない。
その時代が、そのメディアに上昇気流を与えたのだ。
人間が頭の中でこねくりまわして得たもの等、さほど重要なものではなかった、そうは思わないだろうか。


だから、COCOLOに必要なものは、少し上がった聴取率ではない。
そのメディアがどうやれば今の空気の中のかすかな上昇気流を関知し、その風に合わせた番組を開発し、そしてその風を待つ忍耐力を持つかだろう。
こうすれば、数字が上がる、売上が上がると頭の中をぐるぐる回る議論を続けている間は、事態は変わらない、ユーザーに刺さってもいかない。
作り手側がどれだけ風を読めるのか。
その勘を持たない現場が、過去の番組をリピートしている、そうならないように経営サイドがどういう決断をするか、畢竟そのあたりに問題があるような気がしてならない。



ラジオにまつわるエトセトラ

村上春樹「1Q84」の一節。

「昼間のラジオ番組は主婦と高齢者を主なリスナーと設定して作られている。出演している人々は気の抜けた冗談を口にし、意味のないバカ笑いをし、月並みに愚かしい意見を述べ、耳を覆いたくなるような音楽をかけた。そして誰も欲しがらないような商品を声高に宣伝した。」(第三巻 P309)

村上春樹氏はよくラジオを話題にする。
小説の中で、ラジオ(特にFM局)を聞きながら、珈琲の2杯目を主人公が飲んでいたりする。
ラジオは、小説の世界の小道具として効果的なのかもしれない。
テレビはすべてを語りすぎる。
ラジオなら、脇役としてキラリ光る。


ラジオが文学の中でどれだけ登場してくるか。
一昔前、ラジオは青春の一ページとして効果的によく使われていた。
深夜放送、DJの言葉、リスナーのリクエストカード。
それらが、多くのメッセージを伝えてきていた。
その世界は、確実に時代を語っていた。
だから、それが商売にすんなりと移行していったのだろう。
今は、メッセージを伝えるツールとして、ラジオは居場所を失いはじめている。


村上氏の言葉に戻る。
1984年の話として、ラジオのことを語っているが、実はこの話は今でこそふさわしい。
84年、私はFM局の営業マンだった。
月並みに愚かしい意見というの、理解できるが、誰も欲しがらない商品を声高にというのは、少し違うかなと思う。
当時は、ラジオショッピングは、それほどメジャーではなかった。
ショッピングはテレビや新聞が活用されていた。
ただし、今ほどではないが。
ラジオショッピングって、いつからこんなに一般的になっていったのか。
少なくとも私が営業をしていた時は、ラジオショッピングに力を割いた記憶はない。
ある電機メーカーをクライアントにして、「テレビデオ」なる商品を売る番組を放送したことはある。
番組自体は、中島みゆきのニューアルバム「寒水魚」を特集しながら、合間合間に「テレビデオ」を紹介、特別の電話番号を設定してリスナーからの注文を受けるという内容だった。
だが、この企画は大失敗だった。
電話はかかってきたが、何故か中島みゆきにのアルバムを問い合わせばかり。
今かかった曲は何か、このアルバムはいつ出るのか、肝心の買いたいというリスナーからの電話はとれずじまい。
ラジオは、ものを買うメディアとは当時思われていなかったのだろう。
今とはまるで違う。


そうだ、少し前久しぶりに古巣のFM局の社員と会った。
彼は言った、4月の聴取率調査でFMCOCOLOに負けたと。
ああ、そりゃそうだろうなと私は言った。
6/13のスポーツニッポンの記事にこうあった。

4月度の関西圏ラジオ聴取率調査では、FM全局シェア(週平均、12~69歳の男女対象、ビデオリサーチ調べ)でFM OSAKAを抜いて初の2位に浮上。

FMCOCOLOがFM大阪を抜くのは当然だと思う。
何しろ、COCOLOはほとんどを大阪で制作している。
TFMの番組をただ漫然と受けている局とは差がつくのが普通である。
何回も書くが、関西人は東京の番組より大阪の番組を望んでいるのは自明、それが他の地方との違いだ。
なのに、FM大阪は言われるままにTFMの番組を流す。
聴取率で負けるのは当たり前だ、それが何故わからない。


ただ、残念な話はある。
COCOLOがFM大阪を聴取率で抜こうとも、売上とは連動しない。
聴取率と業績はリンクしない、それが今のラジオの実態だ。
FM大阪が何故TFMの番組を受けるのをやめ、COCOLOのように自主制作しないのか。
そうすれば、確実に聴取率は上がる、FM802ともいい勝負ができるのに。
当然だろう。
そんなことしても業績は上がらない、かえって制作費が増すだけだ。
COCOLO、業績上がっているか?
802、赤字が解消したか?


でもなあ、ラジオって聞かれて何ぼじゃないの。
リスナーのため息は聞こえないの、本当はFM大阪を応援したい、でも今の851はちょっとねえ、それが現実だろ?
いや、こんなことをここに書いても意味がない。
ラジオはもはや未来を見失っている。
後は、流れに身をまかせ、なるようになれと叫ぶのみだろう。


ケセラセラ、なるようになる~先のことなど、わからない~♪



続々)何故に私の古巣のFM局が凋落していったか~

蛇女シリーズ(!?)の3回目。
とりあえず、香具師的な展開は今回でやめる。
しばし、異次元に脳回路が迷い込んでいた気がする。
とはいえ、右往左往は今も続いており、何を書いても同じ場所から出て行くことはできそうにないというか。
ま、そこから脱するためにも、何か書き続けるしか方法がないわけで、少し具体的なデータの話を引用することにしたい。


さて、私の古巣のFM局の決算状況が6/7の連合通信に掲載された。

エフエム大阪は平成25年3月期決算と役員人事を内定、25日開催の定時株主総会に付議する。
 それによると、当期の売上高は22億42百万円(前期比95・5%)、営業利益17百万円(912・8%)、経常利益28百万円(245・9%)、当期純利益27百万円となった。
 役員人事は代表取締役会長に唐島夏生エフエム東京専務を内定した。なお、唐島氏はエフエム東京専務を兼任する。

ここに出てくる数字と2012-12-18のブログ:FM大阪~決算内容についての素人的感想で書いた数字を照らし合わせてみたい。
昨期は、売上23億とあるから、今期の売上は6千万ほど減ったことになる。
営業利益は912.8%アップ!の1千7百万、経常利益は245.9%アップ!の2千8百万。
何か凄いアップ率だが、これアップ率をわざわざ書くような数字なのか。
早い話、昨年の営業利益は186万、経常1139万ということ。
昨年は、何とか黒字決算を作ったと読むのが正しいと思う、何しろ同時に特別損失4億円を計上しているのだから。(それゆえ、純利益には%表示なし。)


で、この決算値を見て感じること、そうですねえ、やはり凋落は止まっていないということかなあ。
どう考えても、年間6千万の売上減はでかい。
今の経営陣が必死になって数字を作ろうとしても、6千万も売上が減っているのである。
多分、今のトレンドが続けば、現経営陣では売上増は見込めない、普通ならそう思うのが順当だろう。
経営陣に対するテコ入れは何かあったのか?
答:TFMの専務が代取会長兼務
さて、こんな答で合格点は取れるのか。


多分、裏側では、色々あったはずだ。
もはや我が古巣のFM局は、人事権をTFMに押さえられている。
OBとしては納得できない話だが、そういう流れを作った経営者がいたから仕方がない。
愚かなリーダーが作るのは、愚かな結果のみ。
放送局にはありがち、まともなセンスを持った社員を経営者にする局は少数派、冷徹な事実だ。
古巣のFM局の人事は多分これからも色々あるはず。
特別損失関連の処理も多分終わっていないと推測される、さて、これからどうなるのか。


ついでに連合通信の記事にはFM802の分もあった。

FM802は平成25年3月期決算と役員人事を内定、27日開催の定時株主総会に付議する。
 それによると、当期の営業収益は33億82百万円(前期比116・8%)、営業損失6百万円、経常利益5百万円(7・2%)、当期純損失45百万円となった。
 役員人事は木矢道雄代表取締役社長が代表取締役会長、代表取締役社長に栗花落光代表取締役専務、新任取締役に奥井宏営業部長、村山創太郎ニッポン放送代表取締役社長、河内一友毎日放送代表取締役社長を内定した。荒井俊行取締役は退任する。

802に関しても、こちらで昨年の数字を引用している。
24年3月は28.9億、4500万の黒字と発表されている。
また、中間決算では、16億76百万円(前年同期比133・5%)、営業損失50百万円、経常損失42百万円、中間純損失46百万円だった。
営業損失がだいぶ減っているので、下期でそこそこ挽回したようだ。
とはいえ、下期の売上は17億6百万。
衆院選もあったし、年度末のあぶく銭もあっただろうから、本当はもう少し欲しいところだが。
Cocoloをかかえ、これからどうするのか、注目したいFM802ではある。(栗花落さん、がんばれ)


ということで、ちょっとまともなことを書いてしまった。
次回からは、さて、どこへ行こか戻ろか。