カテゴリー : 2013年 11月

NOTTV~V-high放送のエトセトラ

V-Lowマルチメディア放送って、本当に普及するのだろうかと問題提起をした私だが、今回はそのための参考になるかもしれないV-highを使った携帯向け放送、NOTTVに少し触れてみたい。


初めてこの欄でNOTTVを紹介したのは、2012-4-12の「モバキャス NOTTVに一言」だった。
そこで私が下した結論は、NOTTVは古いイメージしか与えない、イノベーションは感じられないし、そこからの発展性も見えてこないということだった。
2012-6-15の「radiko ~破壊的イノベーション」では、橘川幸夫さんのコラムを紹介し、このままではNOTTVは行き詰るのではないかという危惧を書いた。
橘川氏の言葉をもう一度再掲する。

しかし、AKB48とプロ野球を番組編成の中心に置いてしまうような旧式テレビ業界の発想は、いくら資金を投入しても解決できる問題ではない。根本的なところで「テレビとは何か」「インターネットとは何か」「インターネット時代のテレビとは何か」という問いかけからスタートしない限り、旧来のメディアの二番煎じか、予備軍にしかならない。

つまり、ここには新しいメディアと呼べるものは何も提示されていないということだ。
技術的には新しいサービスを開発したのだろうが、中味が伴わなければニーズは生まれないのは自明のはずだ。
それを何故か業界人は自覚しない。
同じ失敗を繰り返し、それでも同じ方法論に突き進む。
前回書いた「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない。」をもう一度、心に植え付けてほしいものだ。


さて、NOTTVについて、そうは書いてきたものの、実際私はこのNOTTVのサービスをほとんど経験していない。
というか、今のところNTTドコモのスマートフォンしか受信できないので、ユーザーではない私はコンテンツを評価する立場にはいない。
私の周りにも、契約している人がいないので、今も具体的に動画をみたりすることはない。
そういうことで、中味云々の話は無責任になるので、これぐらいでやめる。
その代わり、今のNOTTVの状況を資料とともに紹介しておこう。


まず、今の経営状況である。
こちらのサイトに今年3月期の決算報告が載っている。
結果は216億の赤字である。
サイトでは、「売上高:11.44億円、営業損失216.41億円、当期純損失215.89億円となった。2013年6月に契約者数が100万人を突破したが、月420円の会費を払っているのは、約23万人と想定される。」とあるが、会費支払い者23万人は間違い。
契約者は漸増していくわけだから、1年間で平均すれば23万にかもしれないが、3月段階ではもっと多くなっているはず。ま、それは余計なお世話かもしれないが。


しかし、赤字216億は凄い数字だ。
減価償却分もこれからずっと続いて行くわけだから、資本金(準備金含む)500億あっても、あと2年以内に単年度黒字化させないと当然ながら債務超過に陥りかねない。
黒字化させるには、500万人の契約者が必要だと喧伝されていた。
では、その契約者、今は何万人なのだろうか。


それは、NOTTVのサイトにお知らせとして発表されている。
まとめてみると次のようになる。

2013年5月  998,925人
   6月 1,221,344人
   7月 1,351,945人
   8月 1,489,263人
   9月 1,476,716人
   10月 1,480,301人

確かに、6月に100万人を超え、これからどんどん増えて行くのかと予感させたが、結局150万人を超えないまま頭打ち状態だ。
その原因は何かというと、皆さんも何とかなくお分かりだと思うが、今年の9月から他社への対抗のため、iPhoneを販売しはじめたからだ。
iPhoneには、NOTTVのサービスがないのである。
ドコモはiPhoneを売れば売るほど、NOTTVの契約者は増えない、下手をするとアンドロイド系スマートフォンから引越してくるドコモユーザーが出てきて、ますます停滞することになりかねないのだ。
もはやドコモはアンビバレンツな状況、NOTTVの契約者を増やしたいと思っても、iPhoneの販売に力を入れないといけないので、どうしようもないのである。


同業他社が、NOTTVのサービスを自分のスマートフォンに入れてくれることは期待できない。
トップ企業としてのプライドがあるから、auやソフトバンクに頭を下げにいくこともないだろうし。
さて、NOTTVの運命や如何になのだが、このままV-highが衰退することになると、いくらブロック別のV-Lowマルチメディア放送でも、影響を受けないわけにはいかないだろう。
どうするV-high、大丈夫かV-Low。
国土強靭化の予算は確保したようだが、「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない。」状態では、なかなか未来は開けまい。
ということで、少し寄り道をしてV-highの話を書いた。
次回は、またV-Lowの話に戻ってくる予定。


<PS>
来年3月末の売上予想は平均契約者120万人と考えて、60億程度。今年より50億程度増えるが、赤字額は150億前後になる計算になる。
制作費のカットぐらいでは、もちろん済まない額である。




V-Lowマルチメディア放送って、本当に普及するのだろうか(2)

さて、前々回に紹介したITproの「V-Lowマルチメディア放送が切り開く、全く新しい放送サービスとライフスタイルイノベーション(後編)」が11/22付で掲載された。
早速、ざっと読んでみたのだが、予想通りそこには目新しいことはほとんど何も書かれていなかった。
思うのだが、放送業界って、どうしてこんなに的外れな話しか記事にならないのだろう。
いえ、そこに書いてあることが間違いだとは思わない、それも事実なのは確かだ。
だが、その話をする前に、もっとしないといけない話はないのか、と思ってしまう。


防災無線がどうの、地域の情報網がどうのこうのという話はもちろん大事だが、その唯一のソリューションがV-Lowマルチメディア放送というのはどうなんだろう。
それが重要なら、他にもソリューションあるだろう、第一、防災無線の位置づけは今後どうなるのだと言いたくなる。
私は災害時の放送には、マルチメディア放送が最適とは少しも思わない。
理由は簡単だ。
マルチメディア放送端末が、今のラジオ以上に便利になるはずがないと考えるからだ。
アナログラジオほど、災害時に有用なものはないと私は信じている。
AM放送だったら、ゲルマニウムラジオでも簡単に聞くことができる。
しかも電気をあまり消費しない、1本の乾電池で1ヶ月以上は持つ。
マルチメディア放送端末がそんな簡単な構造であるはずもないし、また電池だって1週間持つことも怪しいのではないか。
全然簡便じゃない、それをもろ手を挙げて支持する気には私はならない。
それなら、普通のテレビ放送で十分ではないか、インターネットで十分ではないか、何故にマルチメディア放送なのだ、と。


この間、V-Low周波数帯は、マルチメディア放送ありきで進みすぎていた、今さら後ろへは戻れない、そう思っている人たちがこの流れを必死で作り出そうとしているのではないか。
だいたい、この周波数帯にデジタルラジオを持ってくるという発想は、イギリスの事業的成功を基にしたのではなかったか。
今や、イギリスではラジオはデジタル化され、それが活況を読んでいる、それを日本にも適用しようとしたのではなかったか。
それが、何だかわけのわからないままに終息したDRP(デジタルラジオ推進協会)を生み、これまた何ともいいようのない3セグデジタル放送を生んだのではなかったか。
これらは、お世辞にも成功したとはいえない試みだった。
一体、どれぐらいの金をかけたのか、そんな金があるなら、もっと他にやることがあったのではないか。


ラジオって、そんなことを近年繰り返している。
私がいたミュージックバードを筆頭としたPCM放送、BSラジオ、そしてデジタルラジオ放送、どれも死屍累々である。
ついでに言えばセントギガもそうだったし、モバホ!も同じ経路をたどった。
ITproがモバホ!の終了を語る時にこう書いていた。

どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない。

そう先進的なサービスは重要だ。
だがそれを消費者に刺さるための方法論が、今までのラジオ業界にはない!
一体、放送局も、それを後押しする広告代理店も、関連大企業も何を思ってこんなビジネスを展開してきたのだろう。
放送に対して、何故か国も自治体も企業も甘すぎるのではないか。


成功するかどうかわからない放送事業に、何故にこれぐらいのたよりない根拠で予算をばらまけるのか。
消費者の認知を得ることに、どうしてかくも楽観的立場をとれるのか。
私には疑問だらけのことなのだが、それが放送業界なのである、ラジオの現実なのである。


ということでV-Lowマルチメディア放送について、また愚痴のようなものを書いてしまった。
次回は、もう少し建設的なことに時間を費やしたいと心から思っている。

ラジオが失ったもの

ラジオが何故衰退して行ったのか。
ビジネスモデルが古いから、若者が他のメディアにとられてラジオを聞かなくなったから。
確かにそうだろう、ただ、それで済ましていていいわけはない。
ある人は、ラジオは過去の遺産で食っているだけ、団塊の世代が70歳を過ぎれば、さらに凋落するだろうと予言する。
ま、その類の話は、イヤと言うほど聞かされる。
で、私はそれを少し違う角度から考えてみたい。


ラジオが全盛の時代と今を比べて、失ったと思われるものは何か、そこに焦点を合わせてみる。
一言でいって、ラジオは孤立化したということだ。
例えば、FM局。
全盛の頃は、一緒にFMラジオを盛り上げてくれる勢力がいたということ。
もちろん、広告代理店の存在も大きい。
今も代理店はラジオを広告媒体として取り扱ってはくれるが、その力の入れ方はかつての比ではない。
ついでに売ってくれるぐらい、何しろラジオを売っても大した儲けにならない。
それなら、他のメディアを売る(インターネットとかデジタルサイネージとか)ことに人材を向けた方がいいに決まっている。


でも、もっと大きいのは雑誌や新聞などの活字媒体がFMを過度に取り上げてくれなくなったことだ。
最盛期、FMの番組を取り上げる雑誌が隔週刊で5誌もあったのだ。
今から考えればすごいメディアミックスだ。
当然、雑誌のクライアント=FM局のクライアントという構図が生まれ、広告代理店はそれに基づく広告戦略を提案した。
ラジオはインビジブルであるという話、私は過去に何度かしたと思う。
それゆえ、クライアントにアピールする力がテレビや活字媒体と比べて落ちる。
黄金期の頃、それを補ってくれていたのが、FM雑誌であり、新聞のFMウィークリー欄である。
今の人にはピンと来ないかもしれないが、1990年前後にはまだ存在していたように思う。
エアチェックする番組に赤い線を引いて、ラジカセやカセットデッキに登録していた時代である。
FM雑誌の締め切りは早いので、曲目が決まっていない番組もあったが、新聞には局から追加で発表した曲が掲載されるので、重宝した人も多かったはずだ。


広告媒体にとって、やはり見えるということは大きい。
クライアントにプレゼンする時、テレビや活字媒体は現物を見せたり映像を移せばイメージしてもらえるが、ラジオのプレゼンに使えるのは、属性を説明する媒体資料や貧弱な番組企画書ぐらいしかない。
何回も言っているが、ビビッドな聴取者の情報も存在しないし、昨日流れた番組の聴取率もわからない。
何となく、ラジオはこんなに聞かれていますという、供給者側に都合のいい情報しか提示されない。
そりゃテレビに負けるし、ネットにも負ける。
で、ラジオはそれを反省もしない。
2ヶ月に1回の聴取率調査をするだけで精一杯なのである。
今や、使った広告費が実際にどれだけのユーザーを動かしたかがクライアントの命題なのだ。
効果をはかりにくい媒体=ラジオ、しかも具体的に見えない(インビジブル)のだから、クライアントからすれば、それをどう広告戦略にはめていいか判断がつかないだろう。


しかも、今やクライアントの方の中には、「すみません、ラジオは聞かないのでよくわからないのです。」なんて申し訳なさそうに言われる人もおられる。
もはや、ラジオにはかつてのような援軍はいない。
ラジオが何をしなくても、勝手にもてはやしてくれる媒体は存在しない。
今のラジオは孤立している、孤軍奮闘するしかないのだ。
昔なら他の業界が盛り上げてくれた。
音楽業界もそうだ、スポットをバンバン流してくれたし、ライブスポットもふんだんに入って華やかな感じもした。


今、ラジオはどうだ。
ACだ、JAROだ、献血だ、飲酒運転撲滅だという公共系のスポットがやたらと目立つ。
早い話、これらは利益を生み出さない広告である。
金になる広告は、ほんの一握り。
よくこれで放送局が維持できるものだと私のような世代のものは不思議でならない。
ああ、そうか、ラジオショッピングがあったなあ、あれは完璧なレスポンス広告だが、100人程度の購買者がいれば万々歳なのだから、ラジオ的にはやめられないだろうな。
(ある人のツイッターには笑える話があった。~@Cazuma: MBCラジオ「ハピネスクラブラジオショッピング」。口臭予防スプレーが4本セットで、さらに、プレゼントがついて、約4500円。ここまではよくある話だが、気になったのが「限定数」が「20セット」。どんなに頑張っても売上が9万円程にしかならない~ → そのままだと電波料を払うだけで終り。早い話、セット数を少なく言って、飢餓感をあおる作戦。しかし、これじゃミエミエ)


ラジオ業界が失ったもの、AMだとどうなのだろう。
深夜放送が華やかだった頃は、それに派生する商品やイベントが生まれたりしたし、いわゆる受験産業系や専門学校系のスポットが深夜3時位まで一杯だった記憶がある。
今は、そんなもの数えるほど。
完全に若者市場を失っている、今さらラジオにクラスの話題を持って行かれることはありえないだろうなあ。
とにかくラジオはメディアミックスから疎外されているのは事実。
テレビ業界は、今もテレビ雑誌が地上波、BS、CSと複数誌発行されているし、新聞もテレビ欄を充実させている。
テレビも売上を相当落してきてはいるが、それでもテレビを中心としたメディアミックスの世界は健在である。
多分、ラジオほどは衰退しないだろうと思われるが、一時期の規模が大きすぎたため、コンテンツ的に貧弱になるのは仕方ないだろうね。


さて、今日は一生懸命、2時間近くかけてブログを書いた。
これから推敲しようかと思ったけど、他にすることがあるので、このままアップすることにする。
次回、足りない部分、ちょっとした過ちなど、修正したり追加したりしようと思う。
皆さんのご意見、また聞かせてください、恐惶謹言。