V-Lowマルチメディア放送~その目的って何だろう

ふと思った。
V-Lowマルチメディア放送って、何のためにするのだろう。
その目的って何だろう。
思いつく範囲で箇条書きしてみる。


・アナログテレビが使用していた周波数を有効利用するため
・アナログラジオをデジタル化して、よりサービスを高度化させるため
・災害放送に対応するため
・従来ラジオ業界に参入していなかった企業を取り込むため
・ラジオ業界に限界が見えたことにより、構造そのものを変革することによって新しいラジオビジネスを創造するため
・とにかく今のままではいけないと漠然と思っているラジオ局を救済するため


他にも何かあると思うので、よければコメントなりメールなりいただければうれしい。


等とと書いてみたが、全体的に目的がイマイチはっきりしない感じもしないでもない。
政府としたら、国土強靭化とか、アベノミクス第3弾とか、理屈だけは色々つけるだろう。
また、それを推進しようとする例えばFM東京のご担当の方々も、多くの企業を巻き込むための材料を提示され、着々とマルチメディア放送のスタート環境を整備されつつあるようだ。
ただ、何が足りないのかと考えてみると、どうもここにはイノベーションという言葉が見えてこないということだ。
正直、もはやマルチメディア放送という言葉が陳腐なのだ。
マルチメディア放送って何?と聞く気もしない。
そんな概念はもう古い、もっと違う言葉はないのか、それが始まれば劇的に人々のニーズが変わるぐらいの。


最近の放送業界、やることなすこと一周ほど時代に遅れてはしまいか。
NOTTVが何故伸び悩んでいるか。
それはいわゆるイノベーター層からまるで評価されていないことに要因があるのではないか。
ただ今のデジタルテレビがスマートフォンに入っただけではないかと思われているのだ。
テレビなんて大きい方が全体のニーズは大きい。
そんな小さい画面が必要だと思う人など、どれだけいるのかという話だ。
テレビを見せるのがメインサービスならNOTTVに未来はない。


モバホ!が何故頓挫したのか。
わざわざ端末を買って、毎日でも利用しようと思ったユーザーがどれほどいたのか、と。
面白いコンテンツをどれだけ並べようが、そのための労力を考えても、また毎月の支払いを考えても、ペイするほどのユーザーを集めるには無理があったのではないか。
いわゆるマーケティングの失敗である。
このあたり、ミュージックバードを始めとするCS-PCM放送の失敗と同じだ。
私の反省をこめて、一応書き留めておきたい。


とにかく何らかのイノベーションを引き起こすような要素のないサービスは、いくら先端技術が駆使されていようと絵に描いた餅みたいものだ。
理屈は理屈、ウォンツやニーズはもっとプリミティブな、感性的なものだと思うぐらいでちょうどいい。
しかし、例えばNOTTVって、NTTさんはどんな成功のイメージを描いていたのだろう。
それが、例えば携帯電話という大成功したビジネスモデルに匹敵するものがあるはずと思ったのだろうか。
i-modeのような、何らかのサービスデフォルトを生みだすと思ったのだろうか。
成功したイメージって、何だったのか。
皆が、毎日NOTTVを見、毎月喜んでお金を払うと思っていたのだろうか。
それとも、そこそこユーザーが増えたら、どこかに売っぱらってしまおうと思っていたのだろうか。
本当に成功すると考えていたとしたら、今の状況は明らかに見込み違いといえるのではないか。
少し前に、大体想定の範囲内とか言っていた関係者がおられたが、本気でそう思っているとしたらちょっとやばくないですかと言いたくなる。
まさか本心を言う訳には行かないから、無理矢理、理屈付けしているのだと推察するが。


そういうことでマルチメディア放送。
成功したイメージって、どういうものなのだろう。
ラジオのリスナーが皆新しい端末を持って、毎日それから情報を得る、みたいなものだろうか。
しかし、多分、今ラジオのコア層である高年齢層は、マルチメディア放送には移行しないと私は思う。
相変わらず、アナログラジオ(AMサイマル放送を含め)を聞くか、ちょっと先進的な人はradikoを使ってデジタル放送を聞くだろう。
そりゃ、全国どこでも聞けるようになるならまだ違う要素も生まれてくるだろうが、相変わらず地域限定なのから、radikoもマルチメディア放送もユーザーにとってはさほど変わらないと思うのだ。


前から言っているが、私はradikoを全国どこでも聞けるようにした方が、よほど新しいビジネスモデルが生まれるんじゃないかと考えている。
無料wi-fiステーションを全国に設置し、radikoを誰でもがスマフォでもPCでも、全国のラジオ放送を簡単に聞けるようにした方がイノベーションに繋がると思うのだ。
ラジオを再生させる、ラジオ業界の未来を開拓する、そのために必要なものはイノベーションであり、もはや1周遅れ気味のマルチメディア放送に全力を傾注する時ではないのではないか。


もちろん、V-Lowマルチメディア放送という形が無意味だと言っているわけではない。
もっと多くのイノベーター達が参加してくれば、別の形でサービスが生まれ、例えばプロファイリングが完備できれば、新しい広告メディアとして脚光を浴びることもあるかもしれない。
だが、今のままでは当分無理だ、イノベーター達が驚異的な発想とともに参加してくる可能性は低い。
断言するのは不遜かもしれない。
だが、放送業界が持つある意味囲い込み的な発想、既得権益を確保しておいて、リスクの受け皿にニューカマーを呼び込もうとしている構図では、結局自由なイノベーターの参加が保証されていないように受取られるだろう。


私は多くのそういった放送業界の試みを見てきた。
そこに成功への息吹を感じだことは最近ほとんどない。
かつて成功を味わったものは、自分が消えるリスクを抱えてまで、新しいジャンルでの成功を渇望したりはしない。
とにかく今の放送人には、今を必死に生き抜くことしか考えられない。
新しい発想は、もはや辺境からしかやってこない。
その辺境への架け橋を、今のラジオの人々がつなげることができるか。
ラジオの未来への道は一体どこにあるのか、まだ先は五里霧中だ。



V-Lowマルチメディア放送をポジティブに考えてみた~プロファイリング

私はこのブログでマルチメディア放送を始めとする、デジタルラジオ関連の話題を相当数書いてきたわけだが、別のブログ「フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編」でも、何度となくこの問題を取り上げさせてもらってきた。
で、今回はそのブログの中から、2007-01-30に書いた「デジラジ再び」という内容を引用し、少しV-Lowマルチメディア放送をポジティブにとらえてみることにした。
大丈夫か?V-Lowみたいな話ばかりだと思われないよう、今回は頑張れ!V-Lowみたいな話にチャレンジしてみることにする。
少し長い引用になるが、ご了承願いたい。

放送の業界誌「放送界」(マスコミ研究会発行)新年特集号に「新春鼎談・新産業としての3セグデジタルラジオ」という特集がありました。
TFMの後藤会長とニュービジネスフォーラムのキーパーソン、杉山・宝珠山両氏による3セグデジタルラジオの可能性をさぐった鼎談です。
デジラジにどんなビジネスモデルを描かれるのか、楽しみにして読んだのですが、一般論というか理想論ばかりで、あまり参考になりませんでした。
その中で、唯一後藤会長がこういうことを言っておられました。

「デジタルをきっかけに新しいプロファイリングをいかに売りにむすびつけるかを考えないと。」

イギリスのデジタルラジオが、マーケティングデータを駆使して、この放送を聞いている人はこういう生活をしている、こういう車に乗っているというプロファイリングを商売に結び付けているのに驚いたという体験も語られていました。
ラジオはますますパーソナルメディアになり、あのラジオを聞く人はこういう属性を持った人だということが明確になる、それが商売に結びつくと考えておられるのかもしれません。

ラジオがどこまでプロファイリングを前提としたパーソナルメディアになるかが勝負ということもできるでしょう。
デイリーレポートが出せないラジオが、よりテンポラリーなユーザー属性を提示できるようになれば、インターネットにシフトしつつある広告費を再び呼び戻すことができるようになるのではないか。
聞かれないラジオは淘汰され、より聞かれるラジオに変わっていく、当たり前といえば当たり前の競争社会の原理がやっとラジオ業界にも適用されてくるのではと思います。



デジタルラジオ(マルチメディア放送?)のキーはプロファイリングではないかと、当時のTFM後藤会長は提起されておられた。
今のラジオにないのは、プロファイリング。
その時間を聞いている人の実態が瞬時にわかる、そんな放送が次代のラジオのビジネスモデルの中核になるかもしれないというのだろう。
無料の商業放送に今後不可欠なのは、リスナーの実態が手に取るようにわかることだ。
誰がどう聞いているかも不明、ただ大雑把な、どの世代がどれだけの割合で聞かれているかしか提示できないラジオでは、広告メディアとしては自ずから限界があるのは事実だろう。


ご存知のように、インターネットは実数として反応がカウントされ、ユーザーのプロファイリングを重視したアクセス解析も容易であることは事実だ。
またテレビも個人視聴率も充実してきており、広告ターゲットの層が実際にどれぐらい広告を見たのかもリアルにカウントできる方向へ進んでいる。
それに比べてラジオは旧態依然たるまま。
聴取率調査のやり方、多分この50年近く根本的な部分は変わっていないのではないだろうか。
相変わらず日記式だし、実施回数は年に数えるほどだし。(首都圏は何とか6回実施するようになったが。)
いまだにドンブリ勘定で商売をし、聴取率調査に現れた数字もほとんど非公開。
これからラジオ広告を打とうかなと思っても、具体的な数字は発表されていないから、クライアントはどうしていいかわからない。
(それゆえ、広告代理店が必要なのだろうが、その前にインターネットで大体の聴取率ぐらい、調べればわかるようにすべきではないだろうかと私はよく思うのだ。)


ラジオがこれから生き延びるには、今やっていないことをやること。
その一つが、聴取率調査の具体的な数字を発表すること。
それで、例えばラジオの広告効果とか、どういう番組がどういう層に受け入れられるのかなどを、研究対象として大学や市井の研究家の間で議論がなされたり、提言がなされたりするようになることが重要だ。
広告価値とは、語り合われる価値でもあると思う。
話題になることが活性化を生む、今ラジオ業界はそういう努力をどれだけしているのだろう。


ということで、V-Lowマルチメディア放送で重要視することは、プロファイリングではないかと思うのだ。
今、色んなことが試験放送として実施されているが、あまりプロファイリングを前面に出して語られるコンテンツは少ないように思われる。
こんな放送をすれば、こんな属性をもった人がユーザーとなる。
だから、こういう風に広告を展開すればいい、という提言だ。
O2O(オンラインtoオフライン)という概念を強調しても、それはすでにインターネットの世界でクーポン配布と言う形で一般化されている。
今さら、マルチメディア放送の方がインターネットよりも一斉に大量に送られるから効率的だと言われても、ユーザーとしては半信半疑ではあるまいか。
よしんば、それが事実であったとしても、インターネットで十分だとユーザーに思われてしまっては終わりである。


とにかく、私は今までラジオ業界が本当はやりたくなかったことをやるしか、今の時代には通用しないのではないかと思うのだ。
隠してきた実態を見せること、本当の広告効果を見せること、それなくしてラジオにクライアントの意識が本当に向くのだろうか。
何故に今のラジオがラジオショッピングに依存しているのか、レスポンス広告に依存しているのか、それらがプロファイリングというキーワードを通して明らかになってくると考える。
それから、いつまでも目をそむけていては、これ以上の発展はない。


などと、述べてみたのだが、どこまで通用するのだろうか、この議論は。




V-Lowマルチメディア放送の本気度~夢はどこにある?

さて、またしばらくご無沙汰してしまった。
この間、色んな人と会ったり、V-Lowマルチメディア放送用の端末なるもの(スマートフォン他)を見せてもらったり、具体的なシステムを発注された方からレクチャー受けたりしていた。
で、V-Lowマルチメディア放送は成功するかと聞かれたら、正直、ウ~、わからん!である。


総務省は、まあ本気なんだろう。
ちょうどいいところに、復興予算というか、国土強靭か予算というのが組まれて、それに当てはまるようにプランを修正して、何とか国の政策へと格上げできたようだし。
また、TFM-電通の関係からか、経産省もスキームに絡んできたようだし(radikoと同じ構造?)、そこにNTTドコモも加わって、なかなかの陣容が整ってきたように見える。
安心安全端末(wi-fiルータみたいなもの)とやらも、聞けば100万台作って無料配布するらしいし、自動車のカーナビのオプションにも加えられるらしいし、福岡では来年夏には本格的サービスがはじまるらしいし。


何か、先ほどから、ようだとか、らしいとしか書いていないのが自分でも気になるが、まあ何とかFM東京が構想していた形ができてきたのは確かなのだろう。
各地のマルチメディア放送会社はOK、電波の割り当てはOK、資本参加する大企業もほぼ確保、サービスを提供したいという会社も思惑通り。
技術的にも大丈夫、端末も少し危なっかしいが、最低限は用意できるはず。
送信アンテナの問題も、まだまだ紆余曲折はあるだろうが、基本的な部分はOKという声も聞く。
ただし、メーカーがどこまで本気で受信端末を売り出すかは何とも言えないが。
残念なのは、iPhoneにチューナーを搭載するのは難しいということ、日本だけに特別にという発想はないよなあ、アップルは。
それで、Wi-Fiチューナー型受信機を作り、無線LANなどのアクセスポイントにも使ってもらえるようにし、アプリを使って利用してもらえるようにするらしい。
とにかく、電波を使った放送は、端末命だ。
それが、どういう風に用意され、どれぐらい普及するのか、従来のPCM放送、モバホ!の失敗にどれだけ学んでいるかが問われることになりそうだ。
(NOTTVも、結局それを受ける端末が限定されることで躓いているというのも事実だろうし。)


さて、何かいまいちよく把握できないまま、V-Lowマルチメディア放送がスタートするような気配だが、ITを中心とする業界人にはあまり好意的には思われていないようだ。
あのi-modeを開発したといわれる夏野剛さんは、11/15のツイッターで次のように語っている。

ネット放送が当たり前の時代に時代錯誤する官僚と業… V-Lowマルチメディア放送が切り開く、全く新しい放送サービスとライフスタイルイノベーション(前編)(通信・放送融合型新サービス・ウォッチング)

下手をすると時代錯誤ですよ、官僚の皆さん、放送業界の皆さんと警告しているのかもしれない。
確かに、取り上げられているサービスは、ほとんどインターネットで代替可能なものが多い。
ユーザーが一斉に同じサービスを受けられる、車で受信可能という側面は評価すべきだろうが、さて、それだけでユーザーのニーズは生まれるだろうか。
それぐらいなら、要らない、今のネットで十分とユーザーに言われたら終わりである。
ワンアンドオンリーなメディアとして認識されるには、何があるか。
「どんなに先進的なサービスを開発しても、商品プランや品ぞろえが充実していなければ、消費者の認知は得られない」という問題をどう解消するか。
何かのオルタナティブとして重要、絶対に必要という認識が生まれれば(例えば災害発生時や防災のためのメディアとして)浮かぶ瀬もあるだろうが、さて、何かアピールするものがあるのだろうか。


もう一つ、別のマルチメディア放送に関する記事を紹介しておく。
ダイヤモンド・オンライン11/7の~アナログTV放送の“空き地”を活用する「マルチメディア放送」は何処を目指すのか~ がそれだ。
通信・放送セクターのコンサルタントというクロサカタツヤ氏の論考である。
全文を読むには登録しないといけないので、一応ご了解いただきたいが、その中で、クロサカ氏はこう書く。

たとえば、マルチメディア放送は「ビジネス」を前提として事業モデルやエコシステムの構築を行っていることに、そもそも矛盾や限界があるように思える。市場性の観点からすれば、すでにモバイルブロードバンドとスマートフォンにかなうはずもないし、また特殊なチューナーが必要なシステムが競争力を持つとも思えない。
 むしろはっきりと、公共目的であることを打ち出して、地域ごとのローカルメディアの構築・運営を促進するプラットフォームとして位置づけた方が、いいのではないか。

で、結論はこれである。

現状のように先が見えない状況においては、闇雲に事業化を進めるよりも、マルチメディア放送のあり方について、単に事業化を前提としない、より多様な検討こそが、地域社会の発展につながるはずだ。
 あるいはそうした議論が行えないのだとしたら、むしろ最初へ立ち返ってV-LowとV-Highという周波数の使い方も含めて、議論をやりなおすべきだろう。電波という国民全体の資源が枯渇する中、その活用というならば、そうした厳しさを持って、あたるべきではないか。

お説ごもっともである。
事業的に成功できるかどうかわからないまま突っ込んでいく方式は、今までさんざん失敗してきたことではないかという指摘は私も同意見だ。
とにかく、このV-Lowマルチメディア放送プロジェクトに参画している皆さんは、どこまで本気なんだろうと心から思う。
事業として成功するかどうか以前に、このサービス、本当にユーザーがほしがっているの?金を出してまで、そのサービスを買ってくれるのかという視点からも考えたほうがいいと思うのだ。
商業放送は、今までスポンサーありき、代理店ありきでビジネスを考えてきた。
だから、ユーザーのニーズまでは深く考えてこなかった、とにかくスポンサーがつけば、代理店が何とかしてくれれば、そのサービスは何とかなったのだ、それが放送というビジネスなのだった。
でも、そのスキームは、ここで本当に使えるのか?
一体、それに変わるビジネスモデルを放送業界の人間は持っているのか、日々着々と建築物は立っていくが、その中に入るのは何?それを利用する人は誰?
この道は、いつか来た道~♪